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ジョバンニの島

戦後の北方領土における混乱をドラマチックに描いた感動作。

「ジョバンニの島」(2014日)star4.gif
ジャンルアニメ・ジャンル青春ドラマ・ジャンル戦争
(あらすじ)
 1945年、色丹島に防衛隊長を務める父と猟師の祖父と暮らす10歳と7歳の兄弟、純平と寛太は貧しいながらも仲睦まじく暮らしていた。終戦を迎えると島に大量のソ連兵が上陸して村は占領されてしまう。島民の財産は次々と没収され、村には兵士の家族も暮らすようになった。そんな中、兄弟は美しい少女ターニャと出会う。彼らは次第に交流を始めていくのだが…。

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(レビュー)
 戦後の混乱に巻き込まれる家族の姿をユーモアと感動で綴ったアニメーション作品。

 原作は、実際に当時の色丹島で暮らしていた人間の証言を元にして作られた小説である。但し、小説の方は映画よりもかなりシビアで過激な内容と言うことだ。今回のアニメ版は市井の眼差しに拠った児童文学的な作りになっている。

 物語は朴訥とした雰囲気と戦争の悲惨さを訴える両側面で描かれる。
 前半は子供たちのやり取りなど、割と気楽に観れる心温まるエピソードで固められている。しかし、後半からは故郷を失った純平たちの悲劇的流転をハードに描いている。

 まずは前半、純平とターニャの淡いロマンスが良かった。殺伐とした時代に芽吹く小さな恋は、正に未来の希望の光以外の何物でもない。花畑の映像演出が少々クドイという感じはしたが、二人の純真な交流には心洗われてしまった。

 また、学校で日本人とロシア人の子供たちが互いの歌を歌うのも良いシーンだった。何よりユーモアに溢れており、且つ平和への賛歌のごとき尊さが胸を打つ。

 子供たちのこうした人種を超えた交流は、大人達が起こした醜い争いをことさら愚かしく思わせる。映画を観ながらつくづく平和の尊さを痛感させられた。

 映画は後半から徐々に純平たちの人生に暗雲が立ち込めていく様子をシビアに描いていく。

 まず、島の人々に隠れて米を配給していた父親が逮捕され収容所に拘留されてしまう。このシーンは、漆黒の闇夜に灯るソ連船の真っ赤なライトが実に不気味だった。純平たちの不安と恐怖を表しているかのようで秀逸である。

 更には、祖父の悲しい顛末、島を離れることを余儀なくされた兄弟の旅も実に悲しいものがある。

 こうした悲劇も含め、この映画は平和ボケで終わることなく、戦争の犠牲者たる民間人の姿を丁寧に描いている所が真摯で好感を持てる。

 当時の北方領土における戦乱とそれに呑み込まれた人々の姿を知るという意味でも一見の価値がある作品と言えよう。

 一方、映像は非常に特徴的で面白い作りになっている。大胆なパースが横溢し、それがユーモアやサスペンスを生んでいる。湯浅政明作品に近いと言えばいいだろうか…。

 例えば前半、純平たちの教室にソ連兵が乗り込んでくるシーン。子供目線で描かれるソ連兵の異様な迫力と大きさは、歪な映像になることで彼らの恐怖を上手く演出していた。

 また、純平たちとターニャが初めてコミュニケーションを交わすNゲージのシーンは、アニメーションならではの色彩と動きによって躍動感あふれた素晴らしいシーンとなっている。ここもパースが強烈で、それゆえファンタジックでもあった。

 ユーモアと言うことで言えば、純平の叔父・英夫の存在も大きかった。戦後の混乱を飄々と生き抜く商魂たくましい男で、何とも羨ましい御身分である。
 但し、終盤いつものように純平たちの前に唐突に姿を現したのには興醒めしてしまった。ここは無かった方が良かったように思う。

 尚、なぜタイトルが「ジョバンニの島」なのかというと、これには宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が関係している。宮沢自身かつて樺太を旅し、それが「銀河鉄道の夜」の構想の元になったということなので、あながち関係が無いわけではない。「銀河鉄道の夜」にまつわるシーンはファンタジックに描かれており、そこが作品の抒情性に一役買っている。
[ 2018/04/12 00:26 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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