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おみおくりの作法

孤独死の不安を淡々と綴った佳作。

「おみおくりの作法」(2013英伊)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 ロンドンの民生委員ジョン・メイは孤独死した人の身辺整理をする仕事をしている。ある日、彼のアパートの真向かいでビリーという老人が孤独死した。近所に住んでいながら彼について何も知らなかったことに心を痛めたジョンは、彼の近親者を探し始める。そんな矢先、上司からリストラの一環として解雇を言い渡されてしまう。

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(レビュー)
 孤独死を見送る中年男の最後の仕事をユーモアを交えながら描いたヒューマンドラマ。

 人間関係が希薄になった現代社会を映し出した意欲作と言える。孤独死に向き合いながら、人間は死に際していかに現世に思いを残せるか?そこを問うている。
 ラストを見ると「死」をやや美化しすぎ‥と言う気がしなくもないが、「死」に取りつかれた孤独な民生委員の 「生」にすがる喜びが哀しくも切なく表現されていて、観終わった後に色々と考えさせられた。

 ただ、ラスト手前のドラマチックな展開については、やや違和感を覚えてしまった。本作は淡々とした演出が続く映画なので、少し強引過ぎると感じた。
 自分の最後の仕事をしみじみと噛みしめる。そしてやっと見つけた「生」への期待を予感させて終わり‥でも良かったのではないだろうか。特に、大きな事件などいらない。この映画の場合はその方が良いと思った。

 製作・監督・脚本はウベルト・パゾリーニ。ヒット作「フル・モンティ」(1997英)などの作品を手掛けた敏腕プロデューサである。本作は彼の初の監督作品となる。

 基本的には淡々とした演出で、日常の些細な出来事や人間の心理の機微を丁寧に紡いでみせるタイプの作家のように思った。「フル・モンティ」のようなカリカチュアは皆無で、おそらく彼の本来の作家性はこちら寄りなのだろう。丁寧に作っていると思った。

 時折見せるユーモアも中々に良い。例えば、真面目一辺倒に見えたジョンが、若くて生意気な上司の車に立ち小便をするシーンにはクスリとしてしまった。

 また、家族のいないジョンには密かな趣味がある。自分が見送った故人の写真を自分のアルバムに貼るという趣味で、それを眺めて物思いにふける姿にはしみじみとしたペーソスが感じられた。家族というものに対する憧憬が何となく読み取れる。

 映像も巧みに計算されており唸らされた。特に、画面の色調を微妙に変える小技は見事である。ジョンの孤独性を示唆するように画面は、ほぼ沈んだ色調に抑えられている。それが後半に入ってくると、ビリーの娘と出会うことで彼の人生に光明が差し込む。以降は、画面の明るさが増していくようになる。よく計算されていると思った。

 キャストではジョンを演じたエディ・マーサンの好演。これに尽きると思う。セリフではなく表情だけで複雑な心理を表現した演技は実に見事だった。彼はこれまでは脇役専門として活動してきたが、本作で一気に彼の名が注目されることになった。こういう苦労人が日の目を見るのは何だか嬉しい。 
[ 2018/06/02 17:49 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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