”俺ちゃん”ヒーロー映画第2弾。今回も大胆にして野心的。サービス精神タップリで楽しめる。
「デッドプール2」(2018米)
ジャンルアクション・ジャンルコメディ
(あらすじ) デッドプールことウェイドは、愛するヴァネッサを取り戻して平穏な日々を送っていた。しかしある晩、悪党一味の報復によって彼女を失ってしまう。自暴自棄になったウェイドは、ミュータントの孤児院で虐待にあっていた少年ラッセルを助けようと過激な行動に出て逮捕されてしまう。一方その頃、機械と生物の融合体である超人ケーブルが未来からやってくる。彼の狙いはラッセルの命だった。ウェイドはラッセルを守るためにケーブルと戦うことになる。
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(レビュー) マーベルのヒーロー映画
「デッドプール」(2016米)の続編。
前作に比べると流石にインパクトという点では欠けるが、相変わらずの軽妙なノリと大量に飛び出してくる下ネタ、前作以上に派手になったバイオレンスシーン等、十二分に楽しめた。尚、前作の直後からストーリーが始まっているので、できれば前作を観た上で鑑賞した方が良いだろう。
監督はティム・ミラーからデヴィッド・リーチに変わっている。監督が代わってどうなるのかと心配したが、基本的には前の流れをそのまま踏襲している。元々デヴィッド・リーチは、「ジョン・ウィック」シリーズの製作を務めたり、S・セロン主演の「アトミック・ブロンド」(2017米)の監督もしていた人なので、この手のアクション演出は得意とするところなのだろう。スピード感、ケレンミタップリな見せ方が堂に入っていて、演出自体は実に堅実なものを見せている。
物語の方も中々良く出来てる。
今回キーとなるのはミュータントの少年ラッセルである。彼は孤児院で虐待を受けていた可哀そうな少年で、復讐心に駆られて能力を暴走させてしまう。基本的な物語は、ウェイドがそんなラッセルに振り回される…という筋立てになっている。
そして、本作にはもう一人のキーマンが登場する。それは未来からラッセルの命を狙いにやって来た超人ケーブルである。彼もウェイドと同様、愛する家族を失った悲しい過去を持っており、その復讐に執念を燃やしている。
このように今回は復讐と罰、罪と赦しといったハードなドラマが入り組んでおり、ドラマの芯自体は中々の歯ごたえが感じられ何気にアツい展開を見せている。デッドプールと言うとおバカな映画と思う向きもあるかもしれないが、中々侮れない。
また、今回はあからさまに”ファミリー映画”であることをのっけから強調しており、これも騙されたと思って見ていると実にその通りで観終わった後には膝を打ってしまった。
前作にも言えることだが、本シリーズは脚本がよく出来ている。脚本は前作と同じ布陣で、更に今回は主演のライアン・レイノルズが加わっている。
この脚本家チームは、デッドプールという稀代のアンチヒーローをいかに魅力的に見せることが出来るか、ということをよく理解しているのだろう。様々な物を失ったウェイドは他のスーパーヒーローに比べれば劣等生である。X-MENの”見習い”と称されるほどに完全に下位互換的な扱いで、自身もそれを知ってか時々自虐的なネタに走ることがある。
しかし、そんな彼だからこそ人に”優しく”なれるし、愛を欲し、愛する者のためには”強く”なれる。この基本路線が本シリーズはガッチリと固められている。故に終始、楽しく観れるし、ストーリーにも説得力が感じられる。
おまけに、ドラマ自体はかなりウェットな方向で盛り上げられており、結果的に観終わった後には単に痛快だったという鑑賞感以上のカタルシスが得られる。
今回はケーブルの最後の選択に痺れてしまった。正に今作が”ファミリー映画”であることを証明するかのような勇気ある行動だった。
尚、今回も映画ネタがふんだんに登場してくる。
そもそも開幕一番からして、いかにデッドプールが本家「X-MEN」に対してコンプレックスと不満を感じているんかがよく分かる。皮肉の効いたギャグが痛烈だ。
他にも、未来からやって来たケーブルは完全に「ターミネーター」オマージュであるし、オープニングには「007」シリーズや「フラッシュダンス」(1983米)のパロディも登場してくる。
また、ウェイドと天国のヴァネッサの交信はバックに流れるa-haの名曲「Take On Me」からも分かるように、そのPVのパロディとなっている。前作同様、この二人のラブシーンには思わずホロリとさせられてしまった。
本作で難を挙げるとすれば、唯一の日本人キャスト忽那汐里の扱いだろうか…。せっかくの新キャラだがあまりにもぞんざいな扱いで、これではいてもいなくても同じである。もう少し見せ場が欲しかった。