ハン・ソロの名前の由来も知れるスピンオフ作品。
「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(2018米)
ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) 惑星コレリアで生まれ育った若者ハンは幼なじみのキーラとともに故郷からの脱出を図るも失敗、2人は離ればなれになってしまう。銀河一のパイロットになってキーラを迎えに戻ると誓った彼は、帝国軍のパイロットになるため入隊するが…。
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(レビュー) スター・ウォーズ・シリーズのスピンオフ第2弾。人気キャラ、ハン・ソロの過去を描いた番外編である。
第1弾の
「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(2016米)が傑作だったので、こちらにも期待を寄せたが、残念ながら凡作である。
まず脚本にかなり問題がある。
ハン・ソロというキャラがどういう生い立ちを辿って、どういう形でチューバッカとの間に友情関係が芽生えるのか?そして今回新たに登場するキーラとの恋愛関係がどう発展していくのか?そうした経過をことごとく浅く料理してしまっているのでまったくストーリーに興味を持てなかった。今時の映画らしくテンポを重視した結果だろうが、これではドラマに入り込めない。
確かに軽妙でキザなハンのキャラをきちんと踏襲しており、その点では違和感なく観れた。しかし、これだけでは彼の”外面”を取り繕っただけである。決してハン・ソロというキャラの魅力が発揮されているとは言い難い。
せめてチューバッカとの友情くらいはジックリと見せて欲しかった。そうすれば、少しはこのドラマにも感情移入できたのに…と残念でならない。
加えて、ヒロインであるキーラの意志が明確にされないせいで、肝心のロマンスも空虚である。そもそも彼女と偶然再会するということ自体、ご都合主義の極みである。一体彼女は何をしたっかのだろうか?おそらく心の中ではずっとハンのことを思い続けていたのだろうが、彼が不在の3年間に何があったのか?そこが分からないせいで、終始キーラの内面を把握することが難しかった。
この映画は、途中で監督が交代している。最初は
「21ジャンプストリート」(2012米)のフィル・ロードとC・ミラーが監督を務めていた。キャストも決まり撮影も開始されたのだが、ルーカス・フィルムとの見解の相違から降板してしまった。変わって監督に抜擢されたのが名匠ロン・ハワードである。確かに彼はヒット作を生み出す実績のあるベテラン監督である。だが、これが間違いだった。
フィル・ロード&C・ミラーの作風は、これまでのフィルモグラフィーを見ると分かるが、明らかにコメディ寄りである。それに比べてロン・ハワードは、コメディも撮るが、シリアスな作品もたくさん撮っている。要するに大変器用な監督で、何でも出来てしまうのである。それが今回の緊急抜擢に繋がったのだと思うが、しかしそれが裏目に出てしまった。結果、作品のトーンはバラバラになってしまった。
アクションを主体にした軽快なストーリーやハンを含めた登場人物たちのセリフは割と楽観志向である。しかし、画面は所々、薄暗くハードな感じでまとめられている。
一説によると、この交代によって2/3以上も再撮影されたという話がある。性急且つ乱暴な展開や、呆気なく死んでいく脇役たちの扱いを見ると、それも頷ける。今回初の女性型ドローンとなるL3の扱いなど、もっと面白く出来たはずなのに実に勿体なく死んでいく。これではせっかく出てきても何のために出てきたのか分からない。
無論、L3の死が後のファルコン号のコンピューターに繋がっていくということは分かるのだが、そこを如何にドラマチックに見せるかが映画の醍醐味だろう。そこが本作は上手く出来ていない。
他にもある。例えば、ミレニアム・ファルコン号との出会いや、チューバッカ、ランド、反乱軍との出会い。いずれも後のハン・ソロを知っていれば「なるほど」と思えるものである。しかし、そこをどう感動的に見せるのかが映画監督の技量だろう。ただ情報を並べるだけなら誰にでもできる。それはただの答え合わせと一緒である。
アクションシーンについては、よく出来ていると思った。正編はどちらかというと、リアルなロケーションにこだわった撮影をしているが、こちらは完全にコミックタッチなアクションに振り切っている。古き西部劇テイストを意識させた作りも良い。
特に、前半の列車強盗のシーンは、それこそ西部劇では昔からあるアクションシーンであるが、ちょっと特殊な舞台設定になっていて面白かった。また、ハンとチューバッカがファルコンの操縦席に初めて座るシーンも、お馴染みのBGMがかかりテンションが上がった。願わくば、終盤にもう一つ大きな山場となるアクションシーンが欲しかったか…。
キャストは、ハン役のA・エアエンライクが中々頑張っていると思った。確かにH・フォードには似ても似つかない顔立ちをしているが、所作を似せようと努力しているのは伝わってくる。賛否あろうが、少なくとも自分の中での印象は決して悪くはなかった。