いつどこで襲われるか分からないナンセンスさが恐ろしい。
「イットフォローズ」(2014米)
ジャンルホラー
(あらすじ) 19歳のジェイは、新しい恋人ヒューとデートしそのまま初体験をする。その直後、ヒューに薬を嗅がされ気絶してしまう。手足を拘束された状態で意識を取り戻したジェイは、ヒューから驚きの事実を打ち明けられる。自分とセックスしたことで彼女は”ある呪い”に感染したというのだ。その呪いとは…。
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(レビュー) セックスしたことで他人には見えないモノが見えてしまう恐怖のスリラー。
ホラー映画には一つのお約束がある。それはカップルがよろしくやっていると必ず殺人鬼に襲われるという”お約束”である。この映画は正にそのセオリーを換骨奪胎した新たなホラー映画と言うことができよう。
では、何が新しいのかと言うと、それは”敵”である。普通はジェイソンやブギーマンのような実態を持った殺人鬼が相手となろう。しかし、本作の”敵”は違う。実態が無いのだ。他人には見えない”幽霊らしきもの”なのである。しかも、その”幽霊らしきもの”は複数いて、自分以外には見えない。
実際の所、映画を観てもこの”幽霊らしきもの”の正体が何なのかはよく分からなかった。ある時は全裸の女性だったり、ある時は老婆だったり、ある時は大男だったり、何の共通点もない。
しかし、このよく分からない所が逆にリアルで恐ろしい。何しろ”彼ら”の目的が不明な上に、その対処法もまったく分からないからである。
正直、”彼ら”の動きはゾンビのように遅い。だから走って逃げればその場は何とか助かる。そう言う意味では、安心できるのだが、しかし”彼ら”は突然どこからともなく現れるし、一見して普通の人間と何ら変わらないのでかなり恐ろしい。特に、大男が暗闇から出てきた時には怖かった。
また、この映画は単なるジャンル・ムービーではない所も面白い。
いわゆる友情、恋愛ドラマを絡めてきちんとストーリーが構成されている。主人公を間に挟んだ三角関係、姉妹間の嫉妬、非モテとモテ男の対立等、この年頃の少年少女らしい葛藤をピックアップしながら見事に1本の青春ドラマとして完成させている。
ラストの締めくくり方も良い。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか判然としない所に、この年頃の不安や迷いが象徴されていると思った。
本作の難は演出が一部チープな所だろうか…。海辺で幽霊に襲われるシーンがあるが、これは少々間の抜けた演出で笑ってしまった。低予算映画なのでCGが今一つなのは仕方がないにしても、撮り方次第ではもっと恐怖を演出できただろうに…と残念である。
監督・脚本は本作が長編2作目の新人監督である。経歴を調べてみると、前作は若者たちの日常を追った青春群像劇のようである。今回はたまたまホラーというジャンルで撮ったが、おそらくこの監督の資質はそちらなのだろう。
ちなみに、次回作はA・ガーフィールド主演のサスペンス映画で
「アンダー・ザ・シルバーレイク」(2018米)というタイトルで今秋から日本公開である。