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DOOR

ストーカーの恐怖を描いたスプラッター怪作。

「DOOR」(1988日)星3
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 靖子は夫と小学生の息子と幸せな暮らしを送っている平凡な主婦である。ある日、セールスマンから電話がかかってくる。そっけなくそれを切った後、なんとその男が家までやって来た。とっさの訪問に気が動転した靖子はドアを急に閉め、それが原因で男は手をケガしてしまう。以来、靖子は彼に付きまとわれるようになり…。

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(レビュー)
 孤独なセールスマンにつけ狙われる主婦の恐怖をスプラッタ描写を交えて描いたスリラー作品。

 かつてディレクターズ・カンパニーという独立系映画制作会社があった。長谷川和彦を中心とした若い作家たちが集まって作られたこのインディペンデント・ムーブは一時代を築いた。ここから黒沢清、大森一樹、石井聰互といった名だたる監督たちが世に出た。
 本作はそのディレクターズ・カンパニーの下で製作された異色のホラー映画である。

 監督・共同脚本は高橋伴明。
 ピンク映画で実績を積んだ後、かの若松孝二が主催する若松プロに参加し、今でも独自の映画製作を貫き通している気骨の映画人である。このブログでは以前に「光の雨」(2001日)「火火(ひび)」(2005日)を紹介したことがある。彼の作品傾向は多岐にわたり、いわゆる社会派的な問題作を撮ることもあれば、Vシネ・フィールドではエンタメに特化した娯楽作品も撮っている。
 今回は明らかに後者のタイプの作品である。ジャンル・ムービーの範疇に入れて良いだろう。

 ただ、作品が示す先見性はかなりのもので、当時はまだそれほど世間的に話題になっていなかったストーカーの存在を世に知らしめたという意味においては社会派的な作品とも言える。バブル期真っ盛りにおける会社人間の心の闇を投影しており、そこに病んだ社会的病巣を見ることが出来る。演出やストーリーは”見世物”的に特化したジャンル・ムービーだが、ストーカー男の欲望には色々と考えさせられるものがあった。

 現に、本作の視座は終始、靖子にあり、彼女を付け回すストーカー側の心理については一切の説明がない。何を考えてるのか分からない不気味さは、ホラー映画になぞらえれば完全にヒロインを追いかける”モンスター”その物である。…が、その暴走振りはどこか物悲しくもある。

 また、本作には主婦の”反乱”というテーマも読み取れた。
 靖子は育児に追われながら、夫にも構ってもらえず日々、悶々としたストレスを抱えていきている。その反動が出たのだろう。このセールスマンを恐怖し嫌悪しつつも、自由になりたいという欲求から彼のことを受け入れてしまう。この心理はセリフなどでは明確にされていないが、画面からそこはかとなく感じ取れ、そこに彼女の、更に言えば専業主婦の”反乱”が見て取れる。

 特に、セールスマンが歌うシャボン玉の歌を電話口で聞く靖子の表情が、何かを言いたげで印象深かった。自分は、この時靖子にかすかに母性が芽生えたのではないか…と想像した。

 演出は、所々に目を見張るホラータッチが見られる。
 例えば、靖子がセールスマンに追い回される様子を部屋の天井から俯瞰で捉えた1シーン1カットは白眉だった。何とも言えないカタルシスが感じられた。あるいは、息子の身を案じて靖子が幼稚園に駆けつけるシーンも、カットバックの妙技が光っていた。

 ただ、S・キューブリックの「シャイニング」(1980英)のパロディであろう演出は、あからさますぎて失笑してしまった。公園のストーキングシーンも二人の距離が近すぎて突っ込みを入れたくなるものだった。所々に詰めの甘さが感じられる。

 それと、子役の演出が無頓着すぎる。演技も余り上手いとは思えなかった。

 尚、クライマックスには特殊メイクを駆使したスプラッターシーンが登場してくる。担当したのは数々のSF・特撮作品で活躍する原口智生。今回も良い仕事をしている。

 それと助監督に平山秀幸が名が記されていた。彼も後に独り立ちし名監督になっていく。

 キャストでは、靖子を演じた高橋惠子の熱演が目を引いた。監督の高橋伴明とは彼が監督した「TATOO<刺青>あり」(1982日)をきっかけに結婚しているが、夫婦らしい息の合ったコンビ振りが作品に一段の熱気を与えている。
 またセールスマンを演じた堤大二郎もイヤらしい演技をしていて◎。かつてはアイドル歌手として華々しい人気を誇っていたが、本作ではそのイメージを覆すような怪演を見せている。
[ 2018/10/11 00:21 ] ジャンルホラー | TB(0) | CM(0)

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