冴えないオッサンが実は…系アクション映画。
「イコライザー」(2014米)
ジャンルアクション
(あらすじ) ロバート・マッコールはホームセンターで働く真面目な中年男。後輩の面倒をまめに見る慕われる先輩社員だった。退勤後の彼の日課は行きつけのカフェで亡き妻が残した小説を読むことだった。ある日、そこでロシアン・マフィアの娼婦テリーと出会う。彼女が暴行されたことを知ったマッコールは怒りに燃える。
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(レビュー) 表向きは飄々としたどこにでもいる中年男が一皮むけは殺人マシーンという、昨今お馴染みの”強いオヤジ”系アクション映画である。
実はマッコールは元CIAのエージェントだったという余りにもご都合主義な設定だが、テンポの良い話運びと切れの良いアクション演出で中々魅せる作品になっている。
監督はA・フークア。主役のマッコールはデンゼル・ワシントン。この二人は
「トレーニング デイ」(2001米)以来の顔合わせとなる。
それまで正義感の強いイメージだったデンゼルを一気に飛躍させたのは、この「トレーニング デイ」だと思う。正にデンゼルの俳優としての転換点となった作品だ。それだけに今回の作品にも期待を寄せてしまう。
結果、今回もデンゼルの新たな魅力が引き出せていると思った。今まで以上にワイルドでクールなデンゼルが見れる。役の幅を更に広げたという感じを受けた。
物語は至極シンプルである。前半はマッコールの日常を紡ぎながら娼婦テリーとの出会い、不遇な彼女のために正義に目覚める所までを丁寧に描いている。全体的にそつなく作られていて好印象である。
そして、マッコールの過去をミステリアスに伏せた展開も良い。只の気の優しいオジサンでないことは観客にもすぐに分かることである。ではその本性を一体いつ表すのか‥ということであるが、そこが本作の一つの見所となっている。
映画が始まって40分頃、ロシアン・マフィアから暴行を受けて病院送りにされたテリーの仇をうつために彼は敵地に乗り込んでいく。そして、バッタバッタとマフィアを倒していくのだ。ここは圧巻だった。フークアの演出はスピード感とアイディアに溢れていて実に素晴らしい。特に、マッコールの目線でビジュアル化された”マッコール・ビジョン”のアイディアが面白かった。正に本作随一のハイ・テンションなシーンとなっている。
ただ、ドラマとしてはここが最高にボルテージが上がる所で、以降はロシアからやって来た刺客とマッコールの戦いが軸となって展開されていく。テリーは物語から退場してしまい、ここでストーリーの橋が外されてしまった感じを受けた。他にマッコールの同僚や汚職刑事のサブエピソードも語られるが、これらがいずれもロシアン・マフィアに繋がっていくというのも想定内で退屈してしまう。
また、マッコールが人知を超えた強さなため余りハラハラしないというのも問題だ。これでは対するロシアン・マフィアも叶わないだろう…と思えてしまう。
ラストも余りにも出来過ぎて白けてしまう。
カラっとした味付けはいかにもアメリカ映画という感じで良いが、自分的には前半までの期待が後半で萎んでしまった印象である。
キャストでは、テリーを演じたクロエ・G・モレッツが目を引いた。自分の中ではこれまでアイドル的なイメージが強かったが、今回は汚れ役に徹している。もっとも娼婦と言ってもセクシャルな描写があるわけではないので、説得力という点では甘い。ここを超えられないのがアイドル女優の限界か…。ただ、新境地に挑戦した意欲は評価したい。