愛犬を殺された男の復讐をスタイリッシュに描いた痛快作。
「ジョン・ウィック」(2014米カナダ中国)
ジャンルアクション
(あらすじ) 愛する妻を病で亡くした元殺し屋ジョン・ウィックは、深い悲しみに暮れていた。そこに存命だった頃の妻から一匹の小犬デイジーが贈られてくる。ジョンはそれを心の支えに徐々に普段の日常を取り戻していく。そんなある日、彼はロシア人の若者から愛車を売ってほしいとしつこく絡まれる。それを断ると、ジョンは襲撃され車を奪われデイジーまで殺されてしまった。すべてを奪われたジョンは復讐に立ち上がる 。
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(レビュー) 愛する者を失った孤独な殺し屋の壮絶な復讐をスタイリッシュな映像で見せたアクション作品。
ストーリーはいたって単純。色々と突っ込み所も絶えないが、何と言っても本作はアクションが素晴らしい。ジョンは元殺し屋ということで超絶無敵。たった一人で何人もの相手を撃ち殺していく。しかも銃とカンフーを合わせた”ガンフー”なる荒業を駆使しながら躊躇なく殺しまくる。この新鮮なアクションに魅せられた。
惜しむらくはクライマックスの戦いだろうか。ここもぜひ得意のガンフーでやりあって欲しかったが、いきなり銃を捨てて素手で戦うという意外な(?)展開にちょっとガッカリ‥。
本作は殺し屋たちの裏社会が色々と垣間見えて、そこも中々面白かった。
例えば、ジョンが宿泊するホテルは実に奇妙な場所にそびえ立っている。殺し屋の寝床としては中々古風で洒落た味わいで、どこか異空間的雰囲気を醸しだす所が面白い。
また、殺しの痕跡を消してしまう俗称”掃除人”の存在も面白かった。ジョンが電話1本で呼び出せば瞬く間に殺害現場はきれいさっぱり元通りに戻る。
ジョンとは顔なじみの警官もユーモラスだった。彼はジョンの正体もとくと知っている。
こうした設定は普通に考えればリアリティに欠け突っ込みを入れたくなる所だが、逆に”戯画”に徹したことによりハードな復讐劇を屈託のないエンタメへと昇華させている。この割り切りは痛快ですらある。
キャストでは、何と言っても主人公ジョンを演じたK・リーヴスの存在感。これに尽きると思う。
彼は「スピード」(1994米)や「マトリックス」シリーズの爆発的な人気で一躍ハリウッドのスターへ登り詰めたが、それ以降苦しんでいる。主演作はいずれも思うような興収を上げられず、正直ここ最近は落ち目の俳優というレッテルを貼られていた。ご存知の方もいると思うが、路上で一人寂しくコーヒーを飲んでいる所をパパラッチされたり、余り映画スターらしくない一面もあり、今一つパッとしない印象である。逆に言うと、他のスターのようにお高くとまっていなくて良い…という意見もある。
そんな彼が今回は中々どうして。久しぶりに印象深いキャラを演じて見せている。決してマッチョタイプのスターではない彼が、今後も活躍していくのであれば、演技力云々と言うのを除けば、やはりこうした”当たり役”をいかに身に着けるかであろう。実際、映画はスマッシュヒットを飛ばし続編まで製作された。これはK・リーヴス完全復活である。
他に、ジョンの盟友を演じたW・デフォーも中々良かった。普段はアクの強い個性的な演技をするが、今回は意外にも情に熱い男を演じている。キャスティングの妙である。