連続殺人事件を追いかける刑事たちの活躍を描いた作品。
「マーシュランド」(2014スペイン)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) フランコ独裁政権の影響が残る1980年。スペインの湿地帯“マーシュランド”で祭の最中に若い姉妹が失踪する。数日後、二人の遺体が無残な姿で発見される。事件を捜査するフアンとペドロは、過去にも似たような事件が起こっていたことを突き止める。
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(レビュー) 2人の刑事が連続殺人事件に隠された深い”闇”を暴いていく犯罪ドラマ。
スペインの湿地帯マーシュランドのロケーションが作品の味わいを一段と引き上げている。茜色に染まった夕空、どこまでも続く大平原、そして時折挿入される俯瞰空撮。事件そのものは実に凄惨なものだが、こうした数々の美景がコトの残酷さをどこか虚無的に見せている。
また、スコールの中で繰り広げられるクライマックスも、ちょっと他の映画では見られない追跡劇になっていて、こうしたシチュエーションもマシューランドという土地柄を上手く取り入れているような気がした。実に荒々しい光景だが、それが事件の真相追及にかける二人の刑事の執念を物語っている。
かように、本作は何と言っても撮影が一つの大きな魅力となっている。
一方、ストーリーはというと、こちらもスペイン独裁政権下の”闇”が見事に投影されており中々見応えがあった。
少女連続殺人事件に関わってくるのは、麻薬を売りさばくマフィアであったり、小児性愛者、女性差別のコミュニティ、貧困社会、警察の汚職等、様々な問題である。フアンとペドロは事件の背後に隠された謎を紐解きながら、独裁政権下での”傷痕”を目撃していく。
表向きは殺人事件を追跡するミステリードラマであるが、深く読み解けば過去のスペインの歴史が浮かび上がってくるところが面白い。極めて社会派的な作品でもある。
極めつけはラストのオチである。このオチには震撼してしまった。”善”と”悪”が入り混じった、何ともやりきれぬ複雑な感情に襲われる。単純にハッピーエンドとしなかった事で、作品の鑑賞感は随分と重苦しいものとなっている。実に骨太なドラマだ。
また、事件を追う刑事たちのキャラクターの相違も、映画の大きな魅力となっている。
フアンは謎めいた過去を持つ激昂型のベテラン刑事である。一方、彼の相棒となるペドロは身重の妻を都会に残してきた若手刑事である。いずれも熱血型であり、そういう意味では馬が合うのだが、捜査のやり方や考え方を巡っては時々対立する。彼らの関係も面白く見ることが出来た。
そして、二人の刑事を演じたキャストも夫々に魅力的である。闘志を秘めた眼光が印象に残った。