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トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

名脚本家の数奇な半生を綴った伝記映画。

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2015米)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 米ソ冷戦体制の時代、アメリカでは赤狩りが猛威をふるっていた。ハリウッドの売れっ子脚本家ダルトン・トランボもその餌食となる。公聴会で証言を拒んだ彼は議会侮辱罪で収監され、最愛の家族と引き離されてしまう。それから1年後、ようやく出所したトランボだったが、すでにハリウッドではブラックリストに載っていて仕事の依頼は一切来なくなってしまった。仕方なく彼はB級映画専門の脚本を偽名で書き始めることになるのだが…。

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(レビュー)
 ハリウッドで活躍した脚本家ダルトン・トランボの壮絶な半生について描いた伝記ドラマ。

 トランボと言えば「ローマの休日」(1953米)、「黒い牡牛」(1956米)、「ジョニーは戦場へ行った」(1971米)等、数々の傑作を書きあげた名シナリオライターである。映画ファンであれば彼の名を知らない人はいないだろう。しかし、その彼が1940~50年代の赤狩りにあっていたという事実を知っている人は案外少ないのではないだろうか。
 本作はそんな彼の不遇の時代に焦点を当てて作られた映画である。

 自分は彼の半生をドキュメンタリーを見ていたのでおおよそのあらましは知っていた。そのせいか、映画前半は表層的でやや退屈してしまった。これならドキュメンタリーでも十分だろう…と思った。

 しかし、映画中盤にさしかかってからドラマが徐々に厚みを増していくようになる。周囲の人間たちとの友情、一緒に不幸を背負い込む家族との関係が詳細に語られるようになり、ここから一気に興味深く観れるようになった。

 特に、かつての同士である”ハリウット・テン”のメンバーの個々の人生のすれ違いは皮肉的で面白い。

 また、トランボが仕事を奪われ困窮していた時代に、名前を隠してB級映画のシナリオのリライトをしていたという事実も、映画好きにはたまらないものがある。実際に彼の名前はクレジットされていないので、一体どれだけの仕事をしたのかは分からないが、本作を観る限りかなりの早業でシナリオを量産していたことがよく分かる。ジャンルや内容に捉われず職人気質で対応する彼の能力の高さは凄まじく、改めて名ライターと言われる所以が分かる気がした。

 ちなみに、そんなB級映画の中でもアカデミー賞の原案賞を受賞した「黒い牡牛」は異例中の異例と言っていいだろう。普通ではスポットライトが当たらないこの手の映画をアカデミー会員の目に留まらせたのだから、トランボの実力はホンモノだ。

 また、オットー・プレミンジャーやカーク・ダグラスといった映画人たちに引き上げられた逸話も、中々感動的で印象に残った。

 中でも、プレミンジャーに関しては色々と想像できて面白い。
 プレミンジャーは、F・シナトラの熱演が忘れがたい「黄金の腕」(1955米)や洒脱なロメコメ「月蒼くして」(1953米)等、様々なジャンルの映画を撮った名匠である。その一方で「野望の系列」(1961米)「枢機卿」(1963米)といった、言わば体制に抗う反骨の人間ドラマも多く手掛けている。
 特に、「野望の系列」は、赤狩りに晒された政治家についての映画で、これは前年「栄光への脱出」(1960米)で知り合ったトランボの半生をそのまま重ねているようにも見える。プレミンジャーがトランボに一定の共感を持っていたことは、この事実からある程度想像できる。つまり、プレミンジャーはトランボのことを一映画人としてはもちろん、その生き様から人間として敬意を払っていた…と想像できるのだ。だからこそ、彼はトランボに目をかけたのだと思う。

 この映画の中では、他にかの有名な「ローマの休日」の逸話も印象的にフィーチャーされている。ジョン・ウェインやエドワードG・ロビンソンといった有名俳優とのエピソードも映画ファンとしてはニヤリとさせられた。

 このように、この映画はトランボを取り巻く当時の映画界の事情を紐解くうえでも、大変興味深く観ることが出来る逸品となっている。

 キャストではトランボを演じたブライアン・クランストンが中々渋い演技を披露している。飄々とした表情で余り悲壮感を表に出さない演技が好印象だった。
 トランボの妻役を演じたダイアン・レインも久々に見たが、良い年の取り方をしているなと思った。
[ 2018/12/05 22:52 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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