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search/サーチ

全編PC画面で繰り広げられる特異なスタイルのサスペンス映画。
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「search/サーチ」(2018米)star4.gif
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 妻に先立たれ、女子高生の娘マーゴットと2人暮らしのデビッド。ある日、勉強会に行ったはずのマーゴットと連絡が取れなくなる。警察に失踪届を出したデビッドは、担当刑事のヴィックとともに、マーゴットのパソコンにログインし、失踪の謎に繋がる情報を収集していくのだが… 。

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(レビュー)
 シングルファザーが娘の失踪を捜索するうちに意外な真実を目の当たりにしていくサスペンス作品。

 本作の売りは、何と言ても全編PCの画面で展開される特異な作品スタイルである。厳密に言うとスマホの画面で表現されている場面もあるので、全てがPCというわけではない。しかし、いずれにせよ中々凝ったスタイルでこういうやり方があったか…と思わせるアイディア重視の作品となっている。

 ちなみに、全編PC画面上で描かれる映画というのはすでにあって、「アンフレンデッド」(2015米)というホラー映画がそうである。自分は未見なのだが、こういったアイディア勝負の映画というのはいかにも同時代的で面白いと思う。

 一方、ストーリー自体もかなり良く出来ている。実にオーソドックスなサスペンス劇と言えるが、二転三転する所も含め、クライマックスにかけてのボルテージの上げ方が実に上手い。
 デビッドはマーゴットが残した写真や動画。更には、SNSで繋がりのあった人物を探りながら娘の失踪の謎を解き明かしていく。ちょうどそれらはラストに繋がる伏線になっていて事件解明の中で見事に集約されていく過程が圧巻だった。観ててゾクゾクするような興奮を味わえた。

 また、本作は父娘の情愛ドラマとしても中々よく出来ている。妻の死からデビッドとマーゴットの関係は空疎なものとなり、それが今回の事件の発端になっている。デビッドはマーゴットの交友関係も私生活も全く知らない。したがって、彼女がPCに残したログからそれを探っていくしかない。

 この空疎な関係はつまるところ、親子と言えど本性が見えない仮面家族、面と向かって話し合わない現代的な人間関係、PC画面上における匿名性、作られたキャラクターそのものとも言える。

 本作は決していたずらにスタイル”だけ”にこだわった映画ではない。そこにはちゃんとした意味とテーマがある。つまり、ネット上の”虚構”にしがみつく現代人の病理が投影されているのだ。そこに自分は溜飲が下がった。

 そして、そんな”現実”に向き合うことすらできなくなってしまった父娘の悲しみがこのストーリーには通底している。その悲しみは最後に浄化されて感動的に締めくくられているのだが、本作はこうした父娘の情愛ドラマにも抜かりはない。結果、鑑賞感は実に満足のいくものとなった。

 更に言えば、このドラマにはデビッドとマーゴット以外にもう一組の親子が登場してくる。それは担当刑事であるヴィックと彼女の息子だ。実は、この二組の親子は対象関係となっていて、それが本ドラマを一段と奥深いものにしている。この対位もよく考えられていると思った。

 また、本作はSNS社会に対する皮肉もかなり効いている。
 例えば、マーゴット失踪を涙ながらに語るクラスメイトの動画が登場してくる。彼女はマーゴットとは友達でもなんでもない。ただ、目立ちたくて芝居をしているだけなのである。ネットという実体のない世界における人間の浅はかな偽装を意味している。
 娘の生存を信じで奔走するデビッドに対する世間の賛否もリアリティがあった。このあたりは「ソーシャル・ネットワーク」(2010米)以降よく目にするものだ。

 確かに少し出来過ぎと感じる部分もあるにはある。
 例えば、真犯人に繋がる手掛かりはアッサリと見つかってしまうし、デビッドがマーゴットのPC画面に張り付いているせいでドラマ上、不自然に思える箇所が幾つかあった。普通は学校の交友関係を知りたければ、学校に行った方が効率的であろう。この映画はPC画面だけで進行するという括りをしているため、どうしてもそのあたりの脚本上の弱さを感じてしまう。

 とはいえ、そのあたりの弱点は、スピーディーな展開、巧みな演出のおかげもあり、観ている最中には余り気にはならなかった。
 監督、脚本は新人のアニーシュ・チャガンティ。インド系アメリカ人でこれが長編初監督らしい。巧みな話法と活きの良い演出。今後が楽しみな監督がまた一人出てきたという感じがした。
[ 2018/12/20 01:14 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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