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THE GUILTY/ギルティ

アイディア勝負のサスペンス映画。ラジオドラマを聴くがごとく想像を掻き立てられる。
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「THE GUILTY/ギルティ」(2018デンマーク)star4.gif
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 捜査中のトラブルにより現場を外された警察官のアスガー。彼は今、緊急通報指令室のオペレーター勤務に左遷され、元の職場への復帰を目指していた。ある夜、彼は誘拐された女性イーベンから電話を受ける。アスガーは受信機から聞こえる声と音だけを手掛かりに事件の解決を試みるのだが… 。

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(レビュー)
 緊急通報室のオペレーターの必死の捜査を息詰まるタッチで描いたワン・シチュエーション型サスペンス作品。

 低予算なアイディア勝負の映画はこれまでにも色々と観てきたが、まだこういう手があったか!と唸ってしまった。昨年観た「search/サーチ」(2018米)にしてもそうだが、こういうのがあるからインディペンデント映画は侮れない。

 まず何と言っても、”音”だけでサスペンスを作り上げたアイディアが秀逸である。

 カメラはひたすらアスガーのアップを捉えるのみで、他の情報は一切写さない。普通これだけ地味で華のない画面が続くと退屈するものだが、この映画は電話口の向こう側の人々の様々な声を聞かせることによって上手くサスペンスを盛り上げている。

 たわいもない電話に始まり、ちょっとした強盗事件や事故、そして今回の誘拐事件の被害者女性の声、更に誘拐犯と思われる犯人の声、元同僚や元上司の声等々、様々な音声を駆使しながら、ストーリーに緩急を与え、観る側の好奇心をグイグイと引き込んでいる。見事なストーリーテリングと言えよう。

 誘拐事件そのものも、クライマックスで意外な展開が待ち受けていてよく考えられていると思った。実に悲惨な事件だが、ラストで少しだけ救われる感じがする。この救いが鑑賞感の苦さを中和しており、このさじ加減も絶妙である。

 更に、事件の解明と共に気になるのがアスガーの過去である。彼がどうして現場を外されて緊急通報司令室で働くことになったのか?それも徐々に明らかにされていく。かくして、映画のクライマックスで、彼の過去と誘拐事件の顛末が見事に融和されることになる。この構成も見事なカタルシスを生んでいる。

 このように一見すると大変地味な映画だが、脚本自体がよく出来ているということもあり、個人的には観終わった後の満足度はかなり高かった。特にサスペンス好きな人なら必見の作品ではないかと思う。

 ちなみに、これは確信を持てないのだが、本作はジャンル映画という枠に捉われず、もっと普遍的なメッセージを放った作品という見方も出来る。
 それはどういうことかと言うと、途中から出てくるヘビの逸話とそこに暗喩される意味。あるいは、アスガーとイーベンの罪と贖罪の意識の違い。この辺りが、ある種教義的な意味を持っているように考えられるからだ。
 果たして、作り手側がそこまで意識していたのかどうかは分からないが、少なくとも自分はこの物語の端々に信仰的な精神を見ることが出来た。このあたりが作品の鑑賞感をより一層奥深いものにしている。

 一方、観てて一つだけ気になった点がある。それは、アスガーの対応が決して褒められたものではなく、かなり傲慢に映る点だ。
 おそらく彼は正義感が人一番強い男なのだろう。事件の捜査にやや強引な所がある。彼が起こした過去の事件もそうした性格が災いとなって表れた結果なのかもしれない。
 今回も彼の独断と偏見が事件を更に悪化させたという見方ができる。そりゃそうなるよな…と突っ込みを入れたくなることがしばしばあった。このあたりは観る人によっては興が削がれる一因になるかもしれない。

 もっとも、この世に完全な人間など、どこにもいないわけで、誰でも欠点はあるし過ちも犯すものである。
 そういう意味においては、アスガーという人物にはリアリティが感じられた。何でも出来るスーパーマンではなく、いわゆる普通の人間である。そこに観ている我々も共感をおぼえるのだろう。
[ 2019/03/04 01:24 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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