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グリーンブック

笑いと感動で綴ったバディ・ムービーの新たなる傑作!
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「グリーンブック」(2018米)星5
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 1962年、アメリカ。ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしているトニーはガサツで無教養だが家族思いのイタリア系男である。店の改修で失業した所に運転手の仕事が舞い込んでくる。雇い主はカーネギーホールに住む天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーだった。彼は黒人差別が色濃く残る南部へツアーに出る予定だった。トニーは運転手兼ボディガードとしてそれに同行することになるのだが…。

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(レビュー)
 差別主義者のイタリア人と天才黒人ピアニストの旅をユーモアを交えながら描いたロードムービー。

 監督は「メリーに首ったけ」(1998米)等、主におバカなコメディ映画を撮っているP・ファレリー。脚本はファレリーの他に、本作の主人公トニーの息子が参加して共同で書いている。一応、実話を元にした物語である。

 それにしても、まさかP・ファレリーがこんな映画を撮るとは思わなかった。こう言っては失礼だが、彼は割と下ネタを得意とする監督である。そんな彼がこうも真摯で人情味にあふれた好編を撮れるとは思わなかった。良い意味で期待を裏切ってくれたという感じである。

 しかも、黒人差別が色濃く残る時代の物語ということで暗い映画を想像するかもしれないが、差別問題をオブラートに包んで見せているので余り鬱にならずに観ることが出来るのも良い。誰が観ても楽しめる社会派エンタテインメントとして非常に上手く作られている。

 近年、この手の映画では「デトロイト」(2017米)「ムーンライト」(2016米)「それでも夜は明ける」(2013米)等が記憶に新しい。いずれも人種差別の問題を問うた骨太な作品である。ただ、S・リー等、ニュー・ブラック・ムービーが興隆していた頃に比べると、描き方という点においては少し毛色が違ってきているような気がする。映画の中で描かれる人種差別問題は、以前よりも明らかに複雑で多岐にわたってきている。

 例えば、「ムーンライト」は黒人差別の問題を扱っていることは確かだが、主人公は同性愛者であることで周囲から疎外感をおぼえている。むしろそこに重きを置いた作品と言ってもいいくらいで、人種差別という問題はサブ的な扱いになっている。

 また、「それでも夜は明ける」の主人公は、他の奴隷黒人と違って自由黒人だった。同じ黒人でも階級の差が厳然としてあったということを示しており、一括りに黒人=奴隷として描いていなかった。

 本作も然り。シャーリーは他の黒人と比べると裕福で教養もある。いわゆる大多数の黒人から明らかに一線を越えた存在である。しかし、かといって当然、白人にもなれるとうわけでもない。ここがシャーリーというキャラクターのポイントである。つまり、このアイデンティティの不確かさが彼の孤独感を生んでいるのである。
 その孤独感を最も象徴的に表したのが、シャーリーが農作業をする黒人労働者に出会うシーンである。同じ黒人同士でありながら彼らとは住む世界が違うということを彼は嫌というほど自覚したに違いない。

 更に、シャーリーには、もう一つセクシャリティな面で秘密がある。これも彼が一般社会から疎外感を感じる大きな負い目になっている。

 昨今、多様化が進む社会の中で、本作や「ムーンライト」、「それでも夜は明ける」を観ると、人種差別問題の語り口も変わりつつあることよく分かる。もはや黒人だからというだけで差別されるのは過去の作品だけであって、現代では更にもう一つ上の段階でこの問題が語られていることに時代の進化が感じられる。

 もっとも「デトロイト」だけは極めて原点回帰的な作品であり、それゆえメッセージも強烈に発せられていた。それがかえって現代の映画界においてはカウンターになっていたように思う。他に類を見ないこの猛々しさは、やはりC・ビグロー監督である。一切のブレがない。

 ちなみに、本作の先見とも思える作品が過去にあったことは忘れてはならないと思う。それはS・リー監督の「ジャングル・フィーバー」(1991米)という作品である。ここでも黒人は裕福で教養がある人物で、彼と恋に落ちるイタリア系白人女性は貧困層だった。これは本作のシャーリーとトニーの関係によく似ている。

 リーはこの「グリーンブック」に批判的な意見を述べているようだが、それは彼自身が過去に同じ設定の人物関係をすでに描いており、しかも現実を直視させるような真っ向勝負の社会派映画を撮ったという自負があるからなのではないかと思う。本作を観て、感傷に訴えた美談に過ぎない…という揶揄が出てくるのは分からないでもない。

 ただ、自分は果たしてそうだろうか…という感想を持った。
 本作は決して理想主義に凝り固まった作品とは思わない。なぜなら、結局シャーリーはツアーの目的(終盤で明かされるが)を果たすことは出来なかった。これは、現実はそう甘くないということを暗に示していることに他ならない。トニーのように心を開いてくれる白人はいるかもしれないが、未だ多くの人々はシャーリーに壁を作っている。この根強い偏見は決して消えてなくなることはないという”杭”を、この映画は最後に打っている。これは非常に重要な点ではないだろうか。

 本作はこうした社会派的なテーマを扱った作品であるが、一方で人種も社会的地位も、性格も異なるトニーとシャーリーのバディ・ムービーとしてもよく出来ている。

 最初は対立していた彼らはこの旅を通して徐々に固い友情で結ばれていく。二人のやり取りは常にユーモアに溢れていて、正に凸凹コンビの珍道中といった具合で楽しめた。この辺りはコメディ映画で培ってきたファレリー監督の手腕だろう。

 特にケンタッキー・フライドチキンのクダリ、シャーリーの秘密が暴露するクダリが印象に残った。二人の距離がグッと縮まった瞬間のように思う。
 そして、物語終盤に差し掛かる頃には、この旅が終わって欲しくない…と思えるほどに、この二人のことが大好きになってしまった。

 トニーとシャーリー夫々を演じたV・モーテンセン、マハーシャラ・アリの好演も作品に味わいをもたらしている。
 特に、マハーシャラ・アリはピアノの演奏シーンにも挑戦しており、その芸達者ぶりには脱帽である。彼は「ムーンライト」に続き、本作で2度目のアカデミー賞助演男優賞を受賞した。
[ 2019/03/14 01:02 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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