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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

父子の心温まるロードムービー。

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(2013米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 モンタナ州に暮らす老人ウディは、100万ドルの賞金が当たったという嘘の手紙を受け取りそれを信じてしまう。そして、はるか遠くのネブラスカまで歩いて賞金を受け取りに行こうとした。息子デイビッドは、仕方なく彼を車でネブラスカまで連れて行くことにするのだが…。

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(レビュー)
 昔気質の頑固親父と心優しい息子が様々な出来事を通して親子の絆を確かめあっていく珠玉のロードムービー。

 モノクロで紡がれた詩情溢れる映像と、時折見せるユーモア。そして、父子の情愛が魅せる感動が非常にコンパクトにまとめ上げられた秀作である。全編に流れるオフビートなトーンも観てて心地が良かった。

 監督は「ファミリー・ツリー」(2011米)のアレクサンダー・ペイン。

 今回の物語は、年老いた男ウディが故郷を訪れることで自らの半生を振り返っていく、言わば回顧の物語となっている。そういう観点で見れば、本作は同氏の監督作「アバウト・シュミット」(2002米)に通じるような、人生の終末を描いたドラマと言うことができる。

 また、ウディが過去の足跡を辿ることで自らの過ちを知っていくストーリー構成は、I・ベルイマンの傑作「野いちご」(1957スウェーデン)も想起された。
 もっとも、本作にはあそこまでの悲壮感は感じられない。息子デイビッドの存在のおかげで、随分と救いのあるドラマになっている。そこが孤独な旅をする「野いちご」とは決定的に違うところである。観終わった後には前向きになれるようなエンディングで後味は実に爽やかである。

 また、コミカルな演出が多々あるのもA・ペイン監督の真骨頂という感じがした。
 最も笑ったのは入れ歯にまつわる場面だった。旅の途中でウディが入れ歯を無くしてしまい、2人でそれを探すというシーン。この時の二人のやり取りが実に人を食っていて面白かった。

 もちろんシリアスな場面も抜かりはない。ニセの賞金を信じて周囲の人々にバカにされるウディの姿は、やはり観てて気の毒になってしまった。愚かと言えば確かにそうかもしれない。しかし、何かにすがり、それを信じて生きていくのは人生の心理なのではないだろうか。ウディはそれを純粋に実行している。そんな彼を誰が嘲笑できようか?
 むしろ、愚かなのは彼を嘲笑しつつも、その賞金にたかろうとする人々の方である。彼らの強欲さは醜いことこの上ない。

 キャスト陣の演技も特筆に値する。
 何と言ってもウディを演じたB・ダーンの好演。これが見事だった。若い頃はやんちゃなイメージがあった俳優だが、老いてこそ出せる懐の深い演技、肩の力を抜いた自然体な演技が素晴らしかった。妙演とは正にこういうことを言うのだろう。

 また、ウディの恐妻を演じたジューン・スキップも強烈な個性を発揮して、ストーリーを絶妙な按配で揺さぶっている。これほどアクの強い恐妻も、映画の中では中々お目にかかれないだろう。そして、そんな彼女の言動が最初はうっとおしく感じるのだが、後半に入ってくるとそれが不思議と頼もしくなっていく所が良い。”女は強し”を地で行くようなキャラクターで面白かった。
[ 2019/05/10 01:48 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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