スピリチュアルの境地を体感。
「海獣の子供」(2019日)
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー
(あらすじ) 自分の気持ちをうまく言葉に出来ない中学2年生の琉花は、部活でトラブルを起こして参加できなくなってしまう。ある日、別居中の父が働く水族館へ行った彼女は、そこで大水槽の中を優雅に泳ぐ不思議な少年・海と出会う。父から海と彼の兄・空はジュゴンに育てられた少年で研究対象としてここにやって来たと教えられる。琉花は兄弟と交流を育みながら海中で不思議な体験をしていく。
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(レビュー) 少女のひと夏の体験を壮大なスケールで描いたファンタジーアニメ。同名のコミックを「鉄コン筋クリート」((2006日)や「MIND GAME マインド・ゲーム」(2004日)で知られるSTUDIO4℃が製作し作品である。
原作未読ということもあるのだが、残念がら内容を全て理解するまでに至らなかった。物語は当初想像していたものよりも遥かに壮大なスケールに発展していき付いていけなかった…というのが正直な感想である。
例えるなら「2001年宇宙の旅」(1968米)やT・マリック監督の
「ツリー・オブ・ライフ」(2011米)のような観念的で神秘主義的な世界観と言えばいいだろうか…。何の説明もないまま圧倒的イマジネーションの氾濫が終盤を席巻する。
勝手に解釈すれば、おそらくは生命の起源ということを訴えかけたかったのだろう。
ただ、そうだとしても、いかんせん物語のキーとなる隕石の謎や、海と空の出自、途中から登場する老婆のバックストーリーなど、様々な物が投げっぱなしなので観終わった後にモヤモヤした気持ちが残ってしまう。そのへんは観客が想像してくれ、ということなのだろうが、果たしてエンタメ作品としてそれでいいのかどうか…。
ただ、これは現代のお伽噺なんだ、と割り切ってしまえば、それなりに楽しめるのかもしれない。一々理屈を気にするのではなく、ナンセンスで超然とした物語を、まるで子供向けの絵本でも読んでいるかのような”寓話”として捉えてしまえば、観終わった後には何だか心が洗われる。
このように受け取る側の捉え方次第で評価が大きく分かれそうな作品である。
一方、映像は微細に渡って高いクオリティが維持されていて感心させられた。
特に、クライマックスのカオスな映像の連鎖は強烈である。観念的な物語に負けないくらい抽象的なイメージが画面に浩々と広がり、もはや言葉など何の意味も持たなくなってしまうほど美しく尊い。この圧倒的な映像の迫力は映画館のスクリーンでこそ味わえる体験だろう。テレビのサイズでは勿体ない。
また、手書きにこだわったキャラクター造形には終始惹きつけられた。昨今の3DCG隆盛の時代にこのアナログ感は大変意欲的だと思う。もちろん海中の表現などは手書きでは不可能なのでCGで表現されているのだが、こちらもCGとアナログの融合が見事だった。
キャスト陣は一部で違和感を覚える物もあったが概ね良かったと思う。
後で知ったが、琉花役は芦田愛菜で驚いた。子役から培ってきた芸歴は伊達ではない。声だけの演技も中々どうして、実に上手かったように思う。