感動のヒューマンドラマ。
「アリスのままで」(2014米)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 大学教授をしてるアリスは、愛する家族と充実した日々を送っていた。ある日、講演中に突然言葉に詰まってしまう。その後も物忘れが頻繁に起こるようになり、彼女は医師の診断を仰いだ。その結果、若年性アルツハイマー病と宣告される。家族にも動揺が広がる中、病気は徐々に進行し、ついには大学も辞めざるを得なくなり…。
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(レビュー) 若年性アルツハイマー病にかかった中年女性とそれを支える家族の愛をシリアスに綴ったヒューマンドラマ。
簡単な言葉が出てこなかったり、道に迷ったり、同じ事を何度も繰り返したり等々。こうしたアルツハイマーの症状は、普通はお年寄りに起こるものだが、稀に若い人にも起こることがある。以前観た渡辺謙主演の「明日の記憶」(2005日)でも描かれていた。かなり話題になったので、これで若年性アルツハイマーを知った人も多いだろう。実は本作はこの「明日の記憶」とよく似たドラマである。
病気に苦しむアリスの恐怖と不安、それを支える周囲の家族の愛憎。衝突を繰り返しながらも、強い絆で結ばれていく家族の姿は実に感動的である。
特に、ラストシーンの一言。これにはホロリとさせられた。きっとこの物語はこの一言を描くために作られたのではないだろうか。素晴らしいエンディングだった。
アルツハイマーは病状を遅らせることは出来ても決して治すことは出来ない病気である。そういう意味では一種の難病物とも言えるが、本作はそれをことさら”お涙頂戴モノ”にしておらず好感が持てる。
演出も軽快で大変見やすく整えられている。題材が題材だけにこういう作品は観てて重苦しくなりがちだが、要所に家族の温かな眼差しを織り込みながらアリスの塞ぎがちな心を外へ向けさせる作りになっている。おそらくそれはアリスという強いヒロインの成せる技なのだと思うが、ひたすら苦しい、悲しいという作りにはなっていない。
むしろコメディとも思えるような場面もあり、例えばアリスがなくした携帯電話を夫が台所で見つけるシーンがある。夫は「1か月ぶりに見つかった」と言う。1カ月も見つからなかった携帯電話が、まさか台所で見つかるなんて…とクスリとしてしまった。
その一方で、やはりシリアスな演出も要所を締めている。例えば、アリスが万が一のことを考えて、自殺する方法をメモするシーンがある。このメモは後々に繋がる伏線となっているのだが、これにはやるせない思いにさせられた。実に残酷で痛々しく、そしてスリリングだった。
そして、本作の見どころは何と言っても、アリスを演じたジュリアン・ムーアの好演。これに尽きるだろう。特に、後半の演技が絶品だった。セリフのあやふやな言い回しや、どこか上の空のような表情で受け答えする演技が絶妙である。アカデミー賞主演女優賞をはじめ、各国で絶賛されたのも納得の演技である。