シリーズ最終章。ついに歴史に幕が下りる!
「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(2019米)
ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) カイロ・レンは、叔父ダース・ベイダーの遺志を受け継ぎ強大な権力を手にした。そして、かつて銀河の支配者だったパルパティーンの元を訪ねる。一方、フォースを覚醒させたレイは伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの想いを引き継ぎ、レイア将軍率いるわずかなレジスタンスの同志たちとともに立ち上がる。
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(レビュー) 宇宙を舞台に壮絶な戦いが繰り広げられる「スター・ウォーズ」シリーズの最終章。「スター・ウォーズ」(1977米)が公開されてから42年。ついに完結である。
これまでのシリーズを観てきた者としては、こうして無事に最後まで見届けることができて感慨深い。SF映画の革新とまで言われた第1作(第4章)に興奮した小学生時代。そこから続くスカイウォーカー家の戦いがついに終幕を迎えるのだ。
とはいえ、第6章から続く今回の新3部作は、個人的には今一つ乗り切れない思いもある。前作第7章
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017米)では監督・脚本を務めたライアン・ジョンソンのカラーが色濃く出たこともあり、かなり内省的で暗い話だった。確かに意欲作とは思うし、後半のキラーショットのつるべ打ちにはライアン・ジョンソンの強い思い入れが見て取れる。単品としては中々面白い作品だったのだが、一方で前々作
第6章「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015米)を受け継いだ続編としては余り感心しない内容だった。カラーが全く異なる。
今回はそのライアン・ジョンソンから、本3部作のイニシアティブを執り、「フォースの覚醒」を監督したJ・J・エイブラムスにメガホンが戻っている。ご存じのようにエイブラムスは数々の人気シリーズを手掛けてきた職人監督である。その資質が出たせいか、今回は前作のような挑戦的な姿勢を封印し、余り捻らない方向へと舵を切っている。簡単に言えば、よりエンタメとして純粋に楽しめる内容になっている。
これが良かったかどうかは迷う所である。というのも、そのせいで第6章で撒いた種がいくつか消化不良に終わってしまっているからである。
その最たるが、フィンとローズのロマンスである。前作で二人の距離は縮まったかに見えたが、今回はそれがまるでなかったことのような扱いになっている。巷ではローズのキャラクター造形、役回りについて色々な批判の意見が出ていた。今回はその批判をやり過ごそうと、まるで腫れ物にでも触るようにキャラクター、ドラマを外側に追い出してしまった。果たしてこれで良かったのか?個人的には疑問を感じずにいられない。
また、前作でかなり活躍した”曲者”DJも今回は全く出番がなかった。これも勿体なく感じた。
そして、一番の不満はフィンのサイドストーリーである。第6章「フォースの覚醒」を観たときに、自分はレイ、レン、フィンといった新しいキャラクターの成長ドラマを期待した。彼らがこの新三部作をどのように引っ張っていくのかを楽しみにした。
確かにレイとレンのドラマは一応の完結を見せている。レンのドラマは第7章から上手く引き継がれているし、第7章で手薄に感じたレイの葛藤は見事に厚みを蘇らせている。
しかし、フィンに関してはローズとの絡みが白紙になってしまったせいで、まったく後方へ追いやられてしまった。
何事も器用に料理してしまうJ・J・エイブラムスの手腕によって上手くまとめられた完結編であるが、シリーズとして観た場合は残念だった点が多々あるのも事実で、決して諸手を上げて素晴らしい大団円とは喜べない作品になってしまった。
一方で、いくつかサプライズが用意されていて、そこは良かったと思う。
その一つはレイの過去である。前作でネタばらしされていたが、一転してまさかの秘密が明らかにされる。スター・ウォーズらしいと言えば確かにらしい。また、こうした血縁の呪縛があるから、このサーガにはギリシャ悲劇的な重厚さがある。
ファースト・オーダーに潜入していたスパイの正体にも驚かされた。何となく取ってつけた印象もしてしまうが、サプライズとしてはこれ以上ないサプライズであった。
尚、編集で1か所だけ腑に落ちない点があった。中盤でレイとレンが戦ったシーンの後に反乱軍のシーンに場面が切り替わる箇所である。その後、再びレンが父、ハン・ソロの幻影を見る場面に変わるのだが、ここは順番を逆にしたほうが自然なような気がした。今のままでは時間経過的に辻褄が合わない。
映像については、今回も素晴らしかった。特に、大海原をバックにした戦闘シーンは今回の新味だった。クライマックスの派手な戦闘シーンも言わずもがな。圧倒的迫力で興奮させられた。