ウルヴァリンよ永遠に…
「LOGAN/ローガン」(2017米)
ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) すでにミュータントの大半が死滅した2029年。ローガンはメキシコ国境近くの寂れた荒野で年老いたチャールズの面倒を見ながらひっそりと暮らしていた。ある日、ガブリエラという女性が現われ、謎の少女ローラをノースダコタまで送り届けてほしいと頼まれるのだが…。
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(レビュー) アメコミシリーズ「X-MEN」の人気キャラ、ウルヴァリンことローガンを主役に据えた単独の作品。
これまで「X-MEN」シリーズは何本か製作されてきた。最初のシリーズは2000年から2006年にかけて作られたシリーズ。その次に2011年から2016年にかけて作られたX-MEN結成の前日弾にあたるシリーズ。そして、2009年からウルヴァリンを単独の主役に据えて作られた本シリーズである。
自分は第1作「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009米)、第2作「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013米)は未見である。ただ、前2作を観ていなくても、最初の設定さえ理解すれば、特に問題なく観ることができた。とりあえず、ウルヴァリンやチャールズのキャラクターを知っていればすんなり入り込める作品になっている。
監督は前作に続きジェームズ・マンゴールド。彼は本作で製作総指揮、原案、脚本も担当している。
そもそもこの人は様々なジャンルの作品を撮る監督で、こう言っては何だがたいへん器用貧乏なところがある。「17歳のカルテ」(1999米)のような青春ドラマから「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005米)のような音楽伝記映画、
「3時10分、決断のとき」(2007米)のような西部劇。実にジャンルが多彩だ。今回はアメコミ物であるが難なく器用に捌いてるのは、この監督の職人気質だろう。
とはいえ、本作は明らかにこれまでの、どの「X-MEN」シリーズとも毛色が違った作品となっている。個人的には「3時10分、決断のとき」のような西部劇のようなテイストが感じられた。
現に劇中には古典的名作「シェーン」(1953米)が流れてくるし、物語の舞台もこれまでの近未来的な都市ではなく、どこまでも行っても果てしなく続く砂煙が吹き荒れる荒野である。明らかにシリーズの中では異色の作品となっている。
そして、年をとって体力も衰えてしまったウルヴァリンには哀愁が感じられる。彼はすっかり老け込んでしまったプロフェッサーXことチャールズの介護に追われ、突然押し付けられた謎の少女ローラの面倒を見るという二重苦を背負わされながら悪戦苦闘する。そこにはかつての面影はない。通俗的なヒーロー映画とは一線を画した野心作で、そこも異色である。
物語は、そんなウルヴァリンを反ミュータントの武装集団が襲うという流れで展開されていく。
基本的にシリアスな内容だが、ローガンとチャールズの会話、ローガンとローラの疑似親子的な関係が一服の清涼剤的な役割を果たしている。硬軟のバランスが上手く図られているので大変観やすい。このあたりのエンタメ手腕は流石にマンゴールド監督である。彼の職人気質が良く出ている。
また、アクションシーンもかなりハードであり、日本ではR15のレーティングとなっている。ゴリゴリとしたバイオレンス描写は子供よりも大人の鑑賞を意識した演出である。
残念だったのは、ウルヴァリンたちが向かう”エデン”という土地が今一つすんなりと受け入れられなかったことである。X-MENのコミックスに登場する土地らしいのだが、メタ要素が強い架空の土地であり自分などは飲み込みづらかった。