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パラサイト 半地下の家族

格差問題をブラックに描いたサスペンスコメディ。
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「パラサイト 半地下の家族」(2019韓国)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 父キムとその妻チュンスク、大学受験に失敗続きの息子ギウと美大を目指す娘ギジョン。4人は半地下の薄暗い貧乏アパートに暮らしている。しがない内職で糊口を凌ぐ日々だったが、ある日ギウのもとに家庭教師の話が舞い込んでくる。相手はIT企業の社長の娘だった。早速、ギウは家族が暮らす高台の大豪邸へとやって来るのだが…。

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(レビュー)
 半地下に暮らす一家が大豪邸に住む上流家庭に言葉巧みに潜り込んでいく社会派クライム・コメディ。

 監督・脚本は「母なる証明」(2009韓国)「TOKYO!」(2007仏日韓国)のポン・ジュノ。様々な問題作を撮ることで有名な作家であるが、本作も例にもれず。一見すると緩いコメディのように見えるが、蓋を開けてみると中々奥深いテーマが隠されている。

 もはや韓国のみならず世界的な広がりを見せる格差問題が、今回の大きなテーマになっている。半地下に住むキム一家と高台の高級住宅に住むパク一家。この対比がそれを象徴している。実は韓国映画は、このテーマを結構前から取り上げている。

 新鋭ヨン・サンホ監督の「ソウル・ステーション/パンデミック」(2016韓国)、同監督作の「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016韓国)、あるいはポン・ジュノ自身も過去に「スノー・ピアサー」(2016韓国仏米)という映画の中でこの問題を描いていた。こうした格差問題は急激な経済成長を成し遂げてきた韓国社会ではことさら深刻な問題となっているのだろう。
 この「パラサイト~」はそれをブラック・コメディという形で提示している。

 映画前半は、キムたちがパク一家の隙に付け込んでまんまと潜り込むまでを描いている。あまりにも上手くいきすぎて突っ込みを入れたくなるのだが、そこはそれ。上流家庭は世間知らずで危機管理意識に乏しいという意地悪な”寓話”ということなのだろう。

 面白いのはここからで、キム一家はパク一家の邸宅の中に”ある隠された秘密”を発見する。ここから一気に映画はシリアス色を強めながら観る側をグイグイと引き込んでいく。この”隠された秘密”を知ったことでキムたちの計画は悪夢的な崩壊を迎えるのだ。

 本作の肝は正にこの”隠された秘密”にあるように思う。キムたちを”半地下の家族”とすれば、この”隠された秘密”は更に地下深くで生きる”真正・地下の家族”と言っていいだろう。ネタバレを避けるためにこれ以上詳しくは書かないが、この”真正・地下の家族”の登場によって物語は皮肉的な顛末を迎えることになる。

 そして、クライマックスに至り、映画は格差社会の風刺というそれまでのテーマを超え、これまでポン・ジュノが何度も描いてきたテーマ。すなわち人間の業、狂気にまで言及されていくようになる。格差問題は確かに本作の中心となるテーマであるが、最終的には普遍的なテーマへと見事に着地させているのだ。このあたりの手練は流石としか言いようがない。

 映像演出も素晴らしい。同監督作「殺人の追憶」(2003韓国)からすでにクールでドライなタッチは完成されていたが、相変わらずの画面設計、上層の「明」と下層の「暗」の絶妙な配色対比が見事である。
 更に、ポン・ジュノ映画ではもはやお馴染みである”雨”の使い方も秀逸だった。

 ラストは観た人それぞれに解釈を委ねるような終わり方になっている。現在の格差社会。そして人間が本来持っている嫉妬や些末な感情を嫌というほど実感させながら、観客を突き放して終わる。観た者はきっとその意味を問いかけ、我が身に引き寄せて色々と考えてみたくなるだろう。

 尚、今回特に面白いと思ったのは、映像だけでは伝わりにくい”匂い”について果敢に表現の挑戦を試みていたことである。実際、映画は視覚体験のメディアなので、どうしても”匂い”の表現には限界がある。そこを演出する側は色々と工夫しながら表現する。美味しそうな料理や汚いドブ川を写すことで、何となく”匂い”を観客に想像させるわけだ。

 本作ではパクがキムのことを独特の”匂い”がすると表現している。不衛生な半地下暮らしを送っているキムの体には、おそらく鼻をつくような異臭がこびりついているのであろう。自分ではその匂いに中々気付かないが、周りの人間は敏感に感じ取ってしまうものである。
 この”匂い”は本作において非常に重要な意味を持っているように思う。物理的な異臭を意味しているのはもちろん。キムたち下層社会に根付く精神的な”綻び”をも意味しているように思う。他者に寄生してしか生きていけない負け犬根性と言ってもいいかもしれない。
 そして、彼らがこのまま半地下の生活から抜け出せない限り、ずっとこの”匂い”を消すことはできないのである。

 本作にたびたび登場してくる”匂い”という言葉をこう読み解いていくと、格差問題の根深さを改めて思い知らされてしまう。
[ 2020/01/24 00:53 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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