「SING/シング」(2016米)
ジャンルアニメ・ジャンル音楽・ジャンルコメディ:ジャンルファンタジー
(あらすじ) コアラのバスター・ムーンは潰れかけた劇場の支配人。かつての賑わいを取り戻そうと、歌のオーディションを開催する。ところが、募集チラシに間違った賞金額を書いてしまったことで多数の応募者が殺到してしまう。その中には、あがり症の内気なゾウのミーナやパンクロックを愛するヤマアラシの少女アッシュ、ギャング団のボスを父に持つゴリラの青年ジョニーら、様々な動物がいた。
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(レビュー) 潰れかけた劇場を再興しようと悪戦苦闘する動物たちの姿をヒットナンバーに乗せて描いたアニメーション作品。
ポップスやロック、フォーク、カントリー、ジャズ、オペラ。様々な音楽がバックに流れる。どれも聴いたことがある有名な曲ばかりで、ある種大衆向け音楽映画として奇をてらうことなく作った所に好感を持てた。
多種多様な動物たちが、夫々に声高らかに歌い上げる姿にも勇気を覚える。
本作を製作したのは「怪盗グルー」シリーズを手掛けたイルミネーション・エンターテインメントというスタジオである。ディズニーでも動物たちの世界を描いた
「ズートピア」(2016米)という作品があったが、奇しくも本作も同年に製作された作品である。
「ズートピア」は風刺を含めたメッセージ性の強い作品だったが、こちらは思想性は皆無である。純粋にエンタメに傾倒した作りで、そこは物足りないと感じる人がいるかもしれない。しかし、紋切的ながら率直にドラマに重点を置いた作りは大変親しみやすく、個人的には最後まで楽しく観ることができた。
物語は夫々のキャラクターに葛藤を持たせた群像劇になっている。
内気なゾウのミーナは自分の殻を打ち破り、ヤマアラシのアッシュは元相棒を見返すようなパワフルなロックを響かせ、ゴリラのジョニーは父との情愛を浪花節的な展開に乗せて見事に歌い上げている。他にも大家族の主婦をしているブタのロジータ、サックスを吹きながら伊達男を気取るネズミのマイクといった多彩なキャラが場を賑わしている。クライマックスのコンサートではそれぞれに見せ場が用意されている。
また、5人組のアライグマが出てきてムーンの前で売り込むのだが、こちらは日本人のアイドルグループを投影しているようだ。きゃりーぱみゅぱみゅの歌を歌っている。
劇場の支配人コアラのムーンは、如何にも山師らしいずる賢さがあり、これも中々面白い。劇場が文字通り崩壊した後の彼の改心は本作の一つの見所と言えよう。
ただ、流石にここまで上手く作られてしまうと、余りにもご都合主義という感じは拭えない。
一番気になったのは、落ちぶれたムーンの元にみんなが一斉に戻ってくるクダリである。嘘の賞金額で自分たちを騙していた彼をそんなに簡単に許せるだろうか?あまりにも人が良すぎると思った。
映像のクオリティは文句なし。動物たちの活き活きとしたダンスシーンは楽しいし、劇場が崩壊するシーンには破壊のカタルシスが感じられた。そして、何と言ってもクライマックスのコンサートシーンの盛り上がりである。音楽の力も相まって何倍にも迫力が感じられた。
改めて音楽映画の”力”を実感させてくれるような作品である。