「タイガーランド」(2000米)
ジャンル戦争・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 1971年、ベトナム戦争が泥沼化する中、新兵たちは“タイガーランド”と呼ばれる地で一週間におよぶ実戦さながらの訓練をすることになった。そこに反戦を公然と口にする新兵ボズがやってくる。兵隊としての能力は一流だったが、上官からは問題児扱いされる。そんなボズに同じ部隊のウィルソンも反感を覚えるのだが…。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) ベトナム戦争に送り出される新兵たちの過酷な訓練の日々を描いた戦争青春映画。
アウトロー然としたボズがこの映画をとても魅力的なものにしている。
堂々と反戦を主張したり、横暴な教官に反抗したり、軍に縛られて生きる不幸な仲間をあの手この手を使って除隊させたり等々。規律を重んじる軍隊では明らかに異端であり、当然上官からも目を付けられる。
ボズの反戦思考、反体制的な態度には当時のフラワー・ムーブメントの潮流が見て取れる。戦争の中で『反戦』を訴える映画は数多く作られているが、本作はベトナム戦争真っただ中という時代設定が一つの妙味となっている。
こうしてボズは何度も規律を乱して懲罰を受ける。しかし、それでも彼は自分のスタイルを決して曲げたりしない。それはまるで
「暴力脱獄」(1967米)におけるポール・ニューマンのようであり、実にタフなアウトローで魅力的だった。
同期のウィルソンも、そんな彼に最初は反感を覚えるが、苦しい訓練生活を共に掻い潜るうちに彼のスタイルに感化され、その人間性に触れることで友情を芽生えさせていく。このあたりの人間ドラマも中々面白かった。
さらに言えば、本作は何と言ってもラストが痺れる。ウィルソンの目線で描かれるこのラストは、実に郷愁的なテイストで涙を誘うのだが、同時に爽快感も覚える。流石にノートのクダリは臭すぎという気がしなくもないが、素晴らしいエンディングだった。
監督はJ・シューマカー。様々なジャンルを撮る職人気質な監督である。重厚さには欠けるが軽快な演出が持ち前のベテラン監督で、本作も最後までダレることなく上手くまとめていると思った。
特に、クライマックスシーンのサスペンスタッチは印象に残る。決して派手な銃撃戦ではないが、ボズと彼を敵対視する兵士の模擬戦闘を実戦さながらのスリリングさで表現している。
また、本作はカメラも特徴的である。撮影監督を務めたのはM・リヴァティーク。彼の特徴はクローズアップの多用である。緊張感を引き出す上では、この撮影スタイルは功を奏していた。
尚、シューマカー監督とは「フォーン・ブース」(2002米)でもコンビを組んでおり、これも電話ボックスという限られた空間をドキュメンタルに活写することで上手くスリルを作り上げていた。
キャストでは、ボズ役を演じたコリン・ファレルの好演が印象に残った。荒んだ表情の中に一瞬の柔和さを表出させたあたりに生来のスター性を感じる。
また、M・シャノンが1シーンだけ出演している。拷問好きなサディスクティックな教官という役所で、やはりこちらも1シーンながら強烈な印象を残していた。