「ハクソー・リッジ」(2016豪米)
ジャンル戦争・ジャンルアクション
(あらすじ) アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスは、看護師のドロシーと恋に落ちるも、激化する第2次世界大戦に心を痛め、衛生兵になるべく陸軍に志願した。しかし、自らの信条に従って銃に触れることを拒絶した彼は、上官や他の兵士たちから執拗ないやがらせを受けるようになる。
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(レビュー) 実在の人物デズモンド・ドスの半生を激しい戦場シーンを交えて描いた戦争映画。
監督は俳優としても数々の作品に出演しているハリウッド・スター、メル・ギブソン。
過去に「ブレイブハート」(1995米)や
「アポカリプト」(2006米)といった過激なアクション大作を撮ってきたこともあり、今回も戦闘シーンは凄まじい。
舞台となるのは沖縄戦線である。銃弾に倒れ、血しぶきを上げ、肉片が飛び散り、これでもかと言わんばかりの人体破壊描写が戦場の恐怖を観る側に突きつけてくる。いかにもメルらしいマッチョでタフな演出が今回も際立っていた。
そして、死屍累々と化した戦場の中で決死の救出に乗り出すドスの行動も凄まじい。
取り残された負傷兵を一人助けると、再び戻ってまた一人助ける。銃も持たずにこの行為を延々と繰り返す、その姿はどこか狂気をも滲ませる。このストイックな宗教観には、もちろん敬虔なカトリック信者であるメル・ギブソンの信条が投影されていることは間違いない。彼は過去にキリストの受難を描いた「パッション」(2004米伊)という問題作も撮ったことがある。
このように本作におけるドスというキャラクターは、ただの一兵士という意味合いだけでは捉えきれない意味が込められている。例えるなら、それは兵士たちの魂を救済する『天使』のようでもある。
現に過酷な救出劇をやり遂げた彼は、最後にタンカに乗せられて帰還する。その時、彼の身体には太陽の光が降り注ぐ。まるで神の祝福を受けているかのように見えた。
正直、映画自体の作りは前半が平板で退屈に思えた。実在する人間を描くので仕方がない面もあるが、余り思い切った脚色ができないのは如何ともしがたい。
しかし、実際にドスが戦場へと赴く中盤以降は俄然面白くなっていく。彼と戦友たちのやり取りや鬼上官との関係が、物語に幅を持たせるようになり映画を徐々に面白く見せていくようになる。
キャストでは、ドスの鬼気迫る姿を熱演して見せたA・ガーフィールドが素晴らしかった。何かに取りつかれたかのようなその姿は、もはや狂信的演技と言っても良いだろう。