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Fukushima 50

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「Fukushima 50」(2019日)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 最大震度7の巨大地震が東日本を襲った直後、福島第一原子力発電所は巨大津波によって全電源を喪失。1~3号機の原子炉は冷却機能を失い非常事態に陥った。当直長の伊崎ら現場作業員たちは、吉田所長の指揮の下、懸命に状況の把握と事態の収拾に奔走するのだが…。

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(レビュー)
 2011年3月11日に起こった東日本大震災を映像化した作品はこれまでに何本も作られてきた。園子温監督の「希望の国」(2012日英台湾)、ドキュメンタリー「フタバから遠く離れて」(2012日)等。ただ、直接原発事故の現場を描いた映画と言うのはこれが初めてではないだろうか。そういう意味では、大変意義深い作品だと思う。

 実際、現場で奔走する作業員たちの決死の姿は実に尊く、改めて事態の大きさと、本当にあれだけで済んで良かった…という気持ちにさせられた。ニュースだけでは分からない当時の現場の実態が分かりやすく描かれていて、一見の価値がある作品になっている。

 主役は二人の男たち、福島第一原発の吉田所長と彼の元で働く当直長の伊崎である。想定外の巨大津波に襲われ全ての電源を失った原子炉は冷却不能となりメルトダウンの危機にさらされる。彼らはそれを何とか未然に防ごうと陣頭指揮を執る。放射能に汚染される危険を顧みず作業員たちは現場に足を踏み入れていく。

 ソ連の原子力潜水艦の事故を描いた「K-19」(2002米英独)、スリーマイル島の原子力発電所の事故を描いた「チャイナ・シンドローム」(1979米)といった作品があるが、これらの作品同様、原子力の危険性がシビアに啓発されている。特に、前者との共通点は多い。

 リアリティの追及にも熱意を感じた。巨大セットを組み立てた撮影。事故当時の混乱をドキュメンタリータッチで表現した構成が緊迫感と焦燥感を見事に再現している。2時間の尺をまったくダレることなく一気に観れた。

 ただ、この映画、当然のことながら実話をベースに敷いているのだが、果たしてこれは過剰な演出ではないか?と疑われる部分も無くはない。

 例えば、その一つが首相の造形である。かなり恣意的にカリカチュアされており、実話ベースと前置きしている割に随分と浮いて見えてしまった。観る人は当時の総理だった菅直人氏に重ねるのは当然だろうが、余りにもキャラが違い過ぎる。
 また、吉田とテレビ会議でやり取りをする東電本社の幹部の融通の利かなさも酷いもので、このあたりはどこまで事実に即して描かれているのか?
 穿った見方をすれば、間違いなくドラマを盛り上げるべく”より映画的”な演出を施しているように見えた。

 加えて、本作には伊崎家の人間ドラマも用意されている。通り一辺倒な父と娘の確執のドラマに終始し物足りなく感じたが、これもドラマを盛り上げるために用意された”演出”に映ってしまった。

 本作には原作がある。「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」というノンフィクション小説(未読)である。原作を読んでみないと比較のしようがないが、映画版は果たしてそのあたりの料理の仕方はどうだったのか?気になってしまった。
[ 2020/04/07 10:13 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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