「アウトレイジ 最終章」(2017日)
ジャンルアクション
(あらすじ) 山王会と花菱会の抗争が終結し、大友は日韓に大きな影響力を持つフィクサー張会長を頼り韓国へ渡った。そこで花菱会の幹部・花田とトラブルを起こし、張会長の手下が殺されてしまう。これが引き金となり、張会長率いる張グループは花菱会と一触即発状態になってしまう。一方、そんな花菱会も新会長を巡って内部対立が起こり…。
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(レビュー) 北野武が監督・主演を果たした「アウトレイジ」シリーズの最終章。
登場人物やドラマが引き継がれているので、なるべく前2作を観たうえで鑑賞したほうがいいだろう。一見さんには少し辛い内容である。
さて、いよいよ大ヒットシリーズも3作目(最終章)となる。今回もヒットマン大友の破天荒な生き様がスタイリッシュに描かれている。ただ、今回は前2作に比べると大分毛色が異なる作風となっている。
本シリーズの売りの一つだった過激なバイオレンス描写は大人し目で、やや枯れた味わいの作品になっている。
端的に言うと、今回は足を洗うヤクザ者の終焉のドラマである。多くの罪を背負いながら闇社会をサバイブしてきた大友の最後の戦い。そして、その罪に対する自らのケジメの付け方が哀愁タップリに描かれている。
そもそも演じる北野武も還暦である。体力的にもビジュアル的にも衰えを隠せないのは否定しようがない事実である。であるならば、それを前面に押し出すことでキャラクターにリアリティをもたらしたのは、むしろ正解だったかもしれない。変に若作りするよリは、よっぽど良い。
物語は前作から数年後を舞台にしている。
すでに山王会は花菱会の傘下に入り、新たに頭角を現してきた韓国系の新興ヤクザ張グループが台頭してくる。そんな中、花菱会の幹部・花田が張グループの手下を殺したことで、二つの組織は抗争を勃発させる。その一方で、花菱会では内部分裂が起こり、若頭の西野が会長の座を狙い暗躍するようになる。
基本的には前半はこの二つが話の中心となっている。その間、大友はどうしているかというと、海外で身を隠している。なので、彼の活躍はほとんど描かれない。彼が本格的にストーリーに絡んでくるのは中盤からで、激化する抗争を鎮火すべく日本に呼び戻される。
こうした物語構成のため、大友の存在は前2作に比べるとやや影が薄くなっている印象を受けた。これが良いのかどうかは問題であるが、ともかく前2作に比べると今回のドラマは大局的な捉え方になっている。
毎回斬新なバイオレンスシーンで度肝を抜かせてくれる本シリーズであるが、今回もユニークなアイディアが見られた。それは花菱会会長・野村の殺害シーンである。ビジュアル上では見せてないのだが、想像するだに恐ろしかった。こういうアイディアを考える北野武はやはり生粋のサディストなのかもしれない。
また、今回は新会長の野村や幹部の花田が、かなり道化寄りなキャラクターとなっている。コメディリリーフとまでは言わないが、彼らの言動がいい塩梅でユーモアを創出し作品に対する肌触りを若干柔らかくしている。
このあたりは、いかにも北野武流のエンタメである。観る人が嫌悪感をもよおすようなブラックなユーモアもあるが、こうしたファニーなユーモアも彼の作家性の大きなチャームポイントだろう。
そして、このバランスが「アウトレイジ」シリーズでは全体的に上手くいっているような気がした。これまではアート志向が強い作品や、逆に悪ふざけが過ぎるクセの強い作品を連発し、かなり迷走していた北野武であるが、今回のシリーズは完全にエンタメに振り切っており、彼の中でも何か確信めいたものを掴んだのではないだろうか。その意味では、本シリーズが巷でヒットしたことは喜ばしいことだと思う。