「コンプライアンス 服従の心理」(2012米)
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ) ファストフード・バーガー店に警察から1本の電話がかかってくる。女性店員ベッキーに窃盗の疑いがあるというのだ。店長のサンドラは早速ベッキーを呼び出して問い詰めるが、彼女は身に覚えがないと無実を訴える。電話口の向こうの警官はサンドラにベッキーの身体検査をするよう求めるのだが…。
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(レビュー) サンドラは警官に言われるままにベッキーの服を脱がせて身体検査をし、更に下着を袋に入れて持って来いと言われる。ここまで来たら普通は疑うだろう…と突っ込みを入れたくなった。店の誰もニセ警官だと怪しまないので、途中からほとんどコメディのように見えてしまったのが残念である。余りにも非現実的な展開である。
ただ、昨今叫ばれる企業のコンプライアンス問題を、こうした形で切り込んだところは評価したい。しかも、これが実話を元にしているというのであるから驚きである。本当にこんなことがあるの?という疑問は残るものの、本作の製作意義は確実にあると思う。
監督は新鋭の作家。演出はドキュメンタリズムに傾倒し、その場の緊張感を上手く作り出すことに成功してると思った。クローズアップの多様で演者の心理に肉薄していく作風は、キャスト陣の演技力あってこそだろう。
その意味では、サンドラを演じたアン・ダウドの好演は見逃せない。若い女性店員ベッキーに嫉妬するハイミスの店長という役所で、実に冷徹に演じて見せている。しかも、冷徹一辺倒にならず微妙な心理変化も上手く表現していた。
警官に指図されるままにベッキーを辱める行為をエスカレートさせていくと、徐々に彼女の中で申し訳ないという気持ちが増していく。そして、ついに涙を流しながらベッキーの下着を脱がせるのだ。このシーンは大いに見応えがあった。