「容疑者、ホアキン・フェニックス」(2010米)
ジャンルコメディ・ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ) 2008年末に俳優のホアキン・フェニックスが突然、俳優業を引退しラッパーに転向することを宣言する。その過程を追ったモキュメンタリー。
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(レビュー) 「her/世界で一つの彼女」(2013米)や
「ジョーカー」(2019米)、
「バッファロー・ソルジャーズ 戦争のはじめかた」(2001英独)等で知られる俳優ホアキン・フェニックスが突然ラッパーに転向するという事件は、当時多くのメディアで報道されたので記憶している人もいるだろう。自分も半信半疑だったが、その後本作が公開された直後に、実はすべてこの映画を作るために仕組んだ”やらせ”でしたということが分かり、何とも人騒がせな…と思ったものである。
元々、エキセントリックな演技を得意とする人だったので、さもありなんという感じもするが、それにしても多くの周囲の人間を騙してここまでウソをついたのだから、まったくもって質が悪い。
監督はホアキンの義弟ケイシー・アフレック。彼も様々な作品に出演しており、中々良い演技をする俳優である。最近では
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016米)でアカデミー賞の主演男優賞を獲得した。
そんな彼が初演出したのが本作である。兄弟揃ってよくもまぁこんな映画を作ろうとしたものだなぁ…と。
ただ、実際に映画を観てみるとそこかしこに”やらせ”の片りんは見て取れる。観る人が観れば明らかに本作が嘘のドキュメンタリーであることは見抜けるはずである。
例えば、ホアキンが運転する自動車がガードレールに衝突するシーンがある。社内のカメラと社外のカメラ。2台で撮っているのだが、社外カメラは明らかにそこで事故を起こすことを想定してセッティングされている。そうでなければ、事故の決定的瞬間をタイミングよく撮れるはずがない。初めから2台のカメラで撮影にのぞんだのだろう。
他にも、ホアキンがヘロインを堂々とカメラの前で吸うシーンが登場してくる。これも明らかに”やらせ”だと分かる。
このようによく見れば、この映画がリアルなドキュメンタリーなどではなく、全て”やらせ”であることは容易に想像がつく。
ある種バラエティショーだと割り切って観ればそれほど腹は立たないのだが、しかし中には「けしからん!冗談にもほどがある!」と怒りたくなる人がいても当然だと思う。
例えば、ライブイベントでラップをバカにされたホアキンがステージを飛び降りて観客と乱闘騒ぎを起こすシーンがある。仮にやらせだとしても、周囲に対する迷惑行為であることを考えれば、これは洒落では済まされない。
実際、本作は世間から大ひんしゅくを買い、一時はホアキンもケイシーも仕事を干されてしまった。
尚、劇中にはベン・スティラーやジェイミー・フォックスといったハリウッドの俳優たちも登場してくる。彼らも本作が”やらせ”だと知って出演したのだろうか?もし知らないで出演したのなら少し気の毒である。