「AMY エイミー」(2015米英)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル音楽
(あらすじ) 27歳の若さで急逝した英国の天才女性シンガー、エイミー・ワインハウスの波乱に満ちた生涯を描いたドキュメンタリー。
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(レビュー) 正直なところエイミー・ワインハウスのことは名前くらいしか知らず、曲も数度聴いたくらいで、それほど詳しいわけではない。彼女が悲劇の死を遂げた時は、ニュースになったので覚えているが、その時も「そうだったのか…」と思った程度で特別に強い思い入れがあるわけではなかった。
そんな自分がこの映画を観た時に、一番強く感じたのは、彼女は生き急いだ天才だった…という思いである。
最も強く印象に残ったのは、セルビアで行われたコンサートのシーンだった。エイミーは酔っぱらってフラフラの状態でステージに立って1曲も歌うことなく会場から大ブーイングを浴びせられる。あの華々しい大活躍を見せたスターが、ここまでの醜態をファンの前に晒したことが衝撃的だった。
本作では、エイミーがアルコールとドラッグに依存していたことが赤裸々に語られている。死の直接の原因もアルコールの過剰摂取ということで、こういっては元も子もないが、ミュージシャンには付き物の”お約束”のオンパレードである。得てしてスターというものは、富と名声と引き換えに大切なものを失い、孤独に陥り、酒とドラッグに溺れていく…というのがパターンである。その意味では、エイミーも正にそのパターンに当てはまる人生を送ったシンガーだったように思う。
薬を断つために更生施設に入ったエイミーのスチール写真が出てくるのだが、あのふくよかな彼女が痩せこけて完全に風貌が変わっていたことに驚いた。まるで別人である。改めてドラッグの恐ろしさが実感される。
ドキュメンタリーとしての作りは非常にオーソドックスである。彼女の家族や仕事の関係者のインタビュー、当時の記録映像で彼女の半生が淡々と振り返られている。
一つ面白いと思ったのは、彼女の歌がバックに流れるのだが、それがドラマに密接にリンクしていたことである。エイミーは自分の経験を歌詞に乗せて歌うシンガー・ソングライターでもある、彼女が辿って来た人生と歌詞が微妙に重なるのだ。この演出がこの映画をかなりドラマチックなものにしている。
そんな中、エイミーの元夫のお騒がせ男ブレイクと、彼女に”たかろう”と傍について回る父親の存在は、彼女の人生の中では大きな意味を持っていたように思う。おそらく彼らはエイミーの人生における”負”の部分と言えよう。もう少しマシな男と付き合っていれば、もう少し彼女のマネジメントが上手くいっていれば、また彼女の人生も変わっていたかもしれない。