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ルック・オブ・サイレンス

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「ルック・オブ・サイレンス」(2014デンマークインドネシアノルウェーフィンランド英)star4.gif
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ)
 1965年インドネシアで起こった大量虐殺事件を追ったドキュメタリー。被害者遺族と加害者のその後を描いていく。

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(レビュー)
 世界に衝撃を与えた傑作ドキュメンタリー「アクト・オブ・キリング」(2012米)の続編である。

 「アクト・オブ・キリング」は軍事政権下のインドネシアで起こった虐殺の歴史を世に知らしめたという意味でも、また映画の作り方においても非常に画期的なドキュメンタリーだった。本作はその後に製作された作品で、扱っている事件も同じである。しかし、だからと言って、前作の二番煎じな映画になっているわけではない。前作は加害者側から描いた映画だったのに対し、今回は被害者側からの目線で紡いだ、言わばまったく異なる観点から描いた作品になっている。ある意味では姉妹作のように観れる作品かもしれない。

 監督は前作と同じジョシュ・オッペンハイマーである。基本的にはインタビュー映像で構成するオーソドックスな作りであるが、非常にスリリングなシーンを交えながら1時間40分を上手く見せきっており、その手腕、編集は見事である。もはや劇映画でも見ているかのようなドラマチックな感動を与えてくれる。

 そして、このスリリングさを引き出しているのが、今回インタビュアーとなるアディの真摯な眼差しである。彼の静かな眼差しが加害者の苦しい胸中を炙り出していく。

 アディは虐殺で兄を失った青年で、仕事は眼鏡士である。この眼鏡士というのが中々皮肉が効いているのだが(物事の真実を加害者の目に捉えさせていくという意味で)、実に淡々と加害者たちにインタビューをしていく。

 なぜあの悲惨な事件が起こってしまったのか?自分の行為を一体どう思っているのか?等々。アディは冷静な口調で尋ねる。ただ、その眼差しには間違いなく、家族を失った深い悲しみと怒りが満ちており、それが映画に熱度のようなものをもたらしている。

 後で知ったが、そもそも本作の企画発案はアディ自身から監督の方へ提案されたらしい。兄を殺した加害者たちが、カメラの前で嬉々としてインタビューに応じたのを見たことがきっかけだそうである。一見すると冷静に見えるアディだが、本作にかける思いには並々ならぬものがあったに違いない。

 しかし、そんなアディの思いとは裏腹に、やはりと言うか、虐殺の実行者たちは、皆一様に事実を否定する。仮に虐殺があったとしても自分は上官の命令に従っただけだ。あの時はそうするしかなかった。多くの人民が望んだことであり、虐殺は正義だったのだ…と言い張る。
 ここで思い出されるのが、原一男監督の傑作「ゆきゆきて、神軍」(1987日)という映画である。いつの世も人というものは、自分の都合のいいように歴史を捻じ曲げてしまうものである。

 そんな中、最も印象に残ったシーンは、アディが認知症を患った元殺人部隊の実行者にインタビューをする場面だった。
 他の加害者同様、例によって彼もアディの質問をのらりくらりと交わすのだが、それを傍で聞いていた娘が衝撃を受けて涙する。彼女は事件のことをまったく知らず、この時に初めて父が虐殺に関与していたことを知ったのだ。父に代わって娘はアディに謝罪を繰り返す。アディも、その言葉に報いるように彼女を慰める。二人の姿を見ていると、何とも言えない気持ちにさせられた。

 事件は終わっても、決して悲しみは消えない…ということが実感される。


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