fc2ブログ










ビリディアナ

pict2_027.jpg
「ビリディアナ」(1960スペイン)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 ビリディアナは神学に励む修道女見習いである。休暇で育ての親である叔父の家に一時帰宅するが、その晩叔父に睡眠薬を飲まされ眠っている間に犯されそうになった。ショックを受けたビリディアナは出て行こうとするが、叔父はそれを引き止めるべく一計を案じる。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ


(レビュー)
 修道女見習いの少女が叔父の欲望に深く傷つきながらも逞しく成長していく姿をシリアスに綴った作品。

 監督・脚本は名匠ルイス・ブニュエル。
 彼は幼い頃は熱心なキリスト教信者として育てられたが、成長してからは無神論者に転向した。本作は、そんな無神論者であるブニュエルの思想が色濃く出た作品だと言える。

 最たるは、ホームレスの集団が乱痴気騒ぎをする後半パートである。その中にはキリストの最後の晩餐のパロディが出てくる。あろうことかホームレスにキリストの真似をさせるのだから、当然観る人が観れば怒るだろう。
 実際にこれが原因でこの作品は本国では上映禁止となった。当時はフランコ政権下の時代だったというのも問題だったかもしれない。反体制的ということでお蔵入りになってしまった。

 ただし、そんな味噌をつけた本作だが、カンヌ国際映画祭に出品されて見事にパルムドール受賞という偉業を成し遂げた。このことによってブニュエルの名は一躍世界に轟き、結果として本作は多くの人々に称賛を持って迎え入れられることとなった。何とも皮肉的な話である。

 そんな曰く付きの本作であるが、件のパーティー・シーン以外にも、個人的に幾つか気になる場面があった。

 例えば、縄跳びの使い方などは実に秀逸だと思う。叔父の家で働くメイドの娘が使うこの縄跳びは、中盤でアッと驚く使われ方をする。また、後半でも再度、意外な使われ方をされていて、このあたりにはブニュエルの演出の妙を感じる。

 物語も、ブニュエルらしいという意味で中々面白く追いかけることができた。
 聖母のごとく屹立するビリディアナを貶めるプロットは、信じる者は救われるという聖書の教えの反証以外の何物でもない。また、ビリディアナの慈愛は悉く裏切られ、叔父の理不尽な仕打ちにも「小公女」のごとき悲惨さが漂い、救いなど何処にも存在しない。キリスト教に対するブニュエルらしい不信感がはっきりと見て取れる。

 一方で、幾つか放りっぱなしな伏線があったり、全体的にスマートさに欠ける脚本という気もした。
 例えば、ビリディアナの夢遊病という設定は、結局何の意味もなかった。
 あるいは、後半に入って登場する従兄弟のキャラクタリゼーションも今一つ掴めないままだった。彼は馬車に繋がれていた猟犬を気の毒に思い買い取るが、そんな優しい気持ちを持った男がメイドに手を出したり、ホームレスに冷たい態度をとったりするだろうか?彼の立ち回り方を含め、物語上の存在意義が余り感じられない。

 キャストでは、ビリディアナを演じたシルヴィア・ピナルの美しさが印象に残った。また、叔父を演じたフェルナンド・レイも嫌らしい演技が板についてて適役である。
[ 2020/06/27 00:14 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1827-33315b82