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刺さった男

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「刺さった男」(2012スペイン)星3
ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 かつて大ヒット商品の広告を手掛けたロベルトは、今では職を失い家族を抱えてスランプに陥っていた。旧知の会社社長にも冷たくあしらわれたロベルトは、その足で妻ルイサと新婚旅行で訪れた場所にやってくる。ふとしたはずみから遺跡発掘現場に転落してしまった彼は後頭部に太い鉄筋が刺さってしまう。幸いにも即死は免れるが、救急隊やマスコミがやってきて世間の注目を集めるようになっていく。

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(レビュー)
 後頭部に鉄筋が刺さったまま動けなくなってしまった男を巡るブラック・コメディ。

 人を食った設定のコメディで、その中にチクリと風刺が効いている面白い作品である。

 監督はスペインのアレックス・デ・ラ・イグレシア。「どつかれてアンダルシア(仮)」(1999スペイン)、「ビースト 獣の日」(1995スペイン)といった作品を撮っている鬼才である。ジャンルはホラーからファンタジー、コメディと多岐にわたり、作風はハイテンションでナンセンスでブラックでシュールという独特の作家性を持っている。

 ただ、今回は脚本を他人に任せているせいか、従来のブラックなテイストはそこまで強くない。誰が観ても楽しめるような作品で、ドラマも家族愛的な美談に着地させている。

 ただ、もしこれをテーマにするのであれば、ロベルトと子供たちの関係はもっと深く掘り下げるべきだったように思う。妻との関係はそれなりに掘り下げられているが、子供たちとの関係は表層的で添え物的な扱いでしかない。したがって、ロベルトを見守る家族、マスコミの誘いを文字通り蹴飛ばす痛快なラストも今一つ感動するまでには至らなかった。

 むしろ、こちらのほうが本題だと思うのだが、ロベルトに集まるマスコミや野次馬、政治家のゲスっぷりは相当強烈である。番組の独占取材を交渉するテレビ局の重役。ロベルトとテレビ局の間を取り持つエージェント。彼らは人の不幸に群がるハゲタカそのものである。この風刺はかなり毒が効いている。

 また、自ら広告の宣伝文句を編み出してきたロベルトが、逆にマスコミの餌食になっていく…というのも皮肉が効いていて面白い。

 とはいえ、悲劇的な物語でありながら、そこまで陰惨さが感じられないのがイグレシア監督らしい所であるが。
 ロベルトは負傷しているとはいえ、奇跡的に痛みもなく、普通に会話もできる状態である。終盤こそ悲劇色を前面に出すものの、割とあっけらかんとしている。なのでそこまでの悲惨さが感じられず、社会風刺を効かせたコメディとして気軽に楽しめるように作られている。
[ 2020/06/30 00:57 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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