「スガラムルディの魔女」(2015スペイン)
ジャンルホラー・ジャンルコメディ
(あらすじ) 失業と結婚生活の破綻でヤケを起こした男ホセは、仲間たちを率いて白昼堂々、息子を連れて宝石強盗を決行する。しかし逃走の途中で道に迷い、スガラムルディという不気味な村に入ってしまう。そこは世にも恐ろしい人喰い魔女伝説が残る場所だった。
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(レビュー) 強盗団が魔女の村に迷い込んで恐怖の一夜を味わうホラーコメディ。
冒頭の強盗シーンから一気に画面に引き込まれた。強盗団は、人々でにぎわう町の広場で皆コスプレをして犯行の機会を虎視眈々と狙っている。ホセはキリスト、相棒のアントニオは兵隊の玩具、他にスポンジボブやディズニーの某ネズミさん、透明人間等々。こうした奇天烈な格好で人ごみに紛れて強盗に押し入るというのだから何とも大胆である。しかも、ホセの幼い息子が連絡係というのも意外性があって面白かった。
強盗シーン、逃走用のタクシーの強奪、警察との追跡劇と、序盤はハイテンションに展開されていく。タクシー運転手が巻き込まれる形で仲間に加わるのも面白い。
ただ、ここまで一気にノンストップで展開されていた物語は、魔女の村に舞台を移してからややダレてしまう。ホセたちは警察の追跡を巻いて怪しげなホテルに宿泊することになる。そこには当然魔女がいて…という、言わばお化け屋敷型の凡庸なホラー映画になってしまう。冒頭のワクワク感が減り、ありきたりな展開に終始し、やや退屈してしまった。
中盤以降は、村全体を仕切る3人の魔女に捕まり、ホセたちは必至の脱出を試みるようになる。そこにはホセと魔女の間にちょっとしたロマンスも芽生えるのだが、これも余り上手くいっているとは言い難い。せっかくホセの元妻を登場させているのだから、ここはもっと大胆に愛憎渦巻く三角関係のドラマにすることもできただろうに、どうも中途半端である。
ただ、クライマックスの魔女の儀式は、かなりのスケール感で撮られており、ここから再び映画は盛り返していく。個人的には、窮地に立たされた強盗仲間が突然ゲイをカミングアウトするシーンが笑えた。告白された相手のリアクションが実に可笑しかった。
ラストの人を食ったオチも痛快で、何なら続編も可能な締めくくり方となっている。
総合的には中盤ダレるものの、ホラーコメディとしてはまずまずの出来である。
監督、脚本は鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシアス。氏にしては随分とウェルメイドな作りのホラーコメディになっている。一部でゴア描写もあるが、これまでのアクの強い作品を観てきた者としてはやや大人しめに感じた。敢えて商業的な路線を意識したのかな?という感じがしなくもない。