「ウォーム・ボディーズ」(2013米)
ジャンルホラー・ジャンルロマンス
(あらすじ) 街にゾンビがあふれた世界。生き残った人間は砦を築いて身を潜める日々を送っていた。しかし、ゾンビの中にはまだ人間的な感情を持ったゾンビたちもいた。そんなゾンビの一人Rは、物資調達に来ていた人間たちを発見する。彼はその中の少女ジュリーに一目惚れしてしまうのだが…。
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(レビュー) ゾンビと人間の少女の恋をアクションとユーモアを交えて描いたホラー・ロマンス。
原作は全米で人気のYA小説ということである(未読)。ゾンビ映画だからと言ってグロい描写がそれほど出てくるわけでもないので、ホラーが苦手な人でも安心して観ることができると思う。
ゾンビ物も色々とあるが、粗製乱造。もはや作られ過ぎて差別化が難しくなってきている昨今、こういう切り口で見せてくれたところに、まだまだアイディア次第では面白い作品も作れるものだなぁと感心した。
もっとも、ゾンビと人間のコミュニケーションという命題は、すでにゾンビ映画の神様ジョージ・A・ロメロが「死霊のえじき」(1985米)の中で実践している。本作はその延長線上で作られた物語で、ゾンビと人間の間で恋愛は可能なのか?という所に焦点を当てて作られている。
ここに登場するゾンビはまだ半分人間の意識が残っているゾンビである。主人公Rは、片言の言葉を話し、完全にゾンビにはなりきっていない。すでにこの設定からしてゾンビと言えるのか?という古参ゾンビファンはいると思うが、しかしこの設定があるからこそ、このドラマは成立するに至っている。
また、ゾンビには2種類あって、Rのように半分人間の心が残っている者と、完全にゾンビになってしまった”ガイコツ”と呼ばれる種類に分けられる。これも新しい設定ではないかと思う。Rはガイコツからジュリーを守って戦っていく。初めはRを気味悪がるジュリーも、そうこうしていくうちに徐々に愛情が芽生えていくのだ。
監督は
「50/50 フィフティ・フィフティ」(2011米)のジョナサン・レヴィン。
軽快な演出は今回も素晴らしく、スタイリッシュな映像も要所を締めている。全体的にそつなく作っている感じがした。
ただ、物語的には中盤からややダレるのがいただけない。Rとジュリーが人間の砦に戻って以降の展開が、回りくどい上にご都合主義である。原作がティーンエイジャー向けに作られたものであるし、致し方なしと言った所だろうか…。大人向けな歯ごたえを感じられなかったのが残念である。
キャストでは、何と言ってもRを演じたニコラス・ホルトの繊細な演技が絶品だった。子役から活動しているので芸歴の長さは他の若手俳優よりも頭一つ抜きんでている感がある。今後も幅広い活躍を期待したい。