fc2ブログ










怪怪怪怪物!

pict2_033.jpg
「怪怪怪怪物!」(2017台湾)star4.gif
ジャンルホラー・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ)
 クラスのいじめられっ子シューウェイは、ある日、問題を起こしたいじめっ子3人と共に独居老人の手伝いをするボランティア活動を命じられる。そんな中、夜中に老人の家で大小2匹のモンスターに遭遇し、シューウェイたちは小さい方のモンスターを捕獲した。いじめっ子たちはそのモンスターを監禁し虐待を始めるのだが…。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 いじめられっ子の高校生が食人怪物を捕獲したことで恐るべき顛末を迎えていく青春ホラー。

 学校のいじめ問題をモチーフにしていることは明らかで、そこに怪物という存在を放り込んでホラー映画に仕立てたところに本作の妙味である。

 いじめられっ子シューウェイは、いじめっ子のクラスメイトと一緒になって怪物を虐待していくが、それは人間の心の弱さを物語っている。普通のホラーであれば、怪物を倒してカタルシスを得るのだが、この映画は違う。怪物自体が貧弱ということもあるが、観てて同情するくらい、人間に拷問され続けるのだ。

 確かにシューウェイは食人怪物に同情し、自らの血液までも食料として供給した。しかし、直接手を貸さずとも他のいじめっ子の拷問を黙って見ていたことは紛れもない事実である。彼はその気になれば、捕らわれた怪物を逃がすなり、拷問を止めに入るなりすることはできただろう。しかし、彼にその勇気はなかった。傍で怪物がひどい目に合うのを黙って見ていたのである。

 こういうのはいじめ問題の”あるある”で、虐められっ子だったのが、ある日から逆に虐めっ子に仲間入りすることで、一緒に虐めに荷担するという、いわば長い者には巻かれよの精神が働いている。強い者には誰も逆らえないということである。

 映画は終始、怪物に対する非道な拷問が続くため、観てて決して気持ちがいいものではない。不快に感じる人も多いと思う。自分もさっさともう一人の怪物が助けに来て、いじめっ子たちが復讐されないか…と待ち望みながら観ていた。

 しかして、その通りになっていくのだが、そこで問題となるのが主人公シューウェイの顛末である。いじめっ子たちと一緒になって怪物を拷問していた彼も、怪物の餌食になるのかどうか…。

 クライマックスの彼の葛藤は中々見応えがあった。そして、怪物騒動が終わった後にシューウェイが採った行動にも色々考えさせられた。

 このラストには、虐め問題の根深さが改めて示されているように思う。シューウェイの行動は何とも過激であるが、この過激さに奇妙なカタルシスも覚えたのも事実である。それは間違った行動なのだが、しかし問題を解決できないのであればこうするほかない…という彼の心理にも納得させられてしまう。

 ただ、序盤に少しだけ出ていた、もう一人の虐められっ子の少女を、シューウェイは助けている。そこにかすかな安堵も覚えた。
 これがあるとないとでは鑑賞感は全然違ったものとなっていただろう。そういう意味では、全編胸糞悪くなる映画にならなくて良かったと思う。

 もう一つ、本作で上手く作っていると思ったのは、いじめっ子のリーダーのキャラクター造形である。いじめる側の心理というものをきちんと描くことで、彼にもドラマを用意している。それは後半の職員室での担任教師(この教師も罪深い)とのやり取りの中から見えてくる。俗悪極まりないキャラであることは確かだが、生い立ちを考えるとそうなるべくしてなった…ということがよく分かる。だからと言って虐めが良いというわけではないのだが、彼の側に立ってみれば一定の情も禁じ得ない。
[ 2020/07/15 00:53 ] ジャンルホラー | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1835-8e09b6c2