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ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~

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「ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~」(2014米)star4.gif
ジャンルホラー・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 イランのある町。青年アラシュは麻薬に溺れる父と二人で暮らしていた。ある日、せっかく手に入れた新車を、父がつくった借金のカタに麻薬の売人サイードに取り上げられてしまう。車を返してもらおうと彼の家へ向かったアラシュは、そこで無惨に殺されたサイードの死体を見つける。

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(レビュー)
 閉塞感漂う架空の街を舞台に、真面目な青年とヴァンパイアの少女のロマンスを退廃的なムードに乗せて綴った異色のホラー作品。

 前編モノクロ映像で残虐シーンも一切出てこないのでホラー映画として見た場合、完全に肩透かしを食らう作品だろう。どちらかというとボーイ・ミーツ・ガールの恋愛ドラマがメインである。

 監督は本作で長編デビューの新人監督らしい。イラン系アメリカ人の女性ということで、本作の舞台は彼女の出自に起因しているものと思われる。しかして、この手のヴァンパイア映画では余り見かけない新鮮な空気が画面中を席巻している。

 例えばヴァンパイアの少女はイランの民族衣装チャドルを常に身にまとっている。女性抑圧のシンボルとも言える、このファッションを貫いた所に、皮肉めいたメッセージが読みとれる。
 また、少女は自らの呪われた運命に抗ってアラシュと恋に落ちる。つまり自由を獲得していくのだ。このプロットにも、やはりこの監督なりのテーマが込められているのだろう。
 このように、表向きはジャンル映画の体裁を取っているが、深読みしていけば中々懐の深い作品になっていく。

 演出は非常に淡々としている。個人的には、ジム・ジャームッシュのオフビートなユーモアに近い印象を受けた。
 尚、彼も2013年に「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ」(2013米英独)というヴァンパイア映画を撮っている。正直、ジャームッシュらしからぬ内容の映画で個人的にはこれは失敗作だったと思っている。

 あるいは、少女の無表情な振る舞いには、非人間性、それこそイラン社会における女性の喪失感を託しているのかもしれないが、何となくブレッソンの映画に通じるような冷え冷えとしたクールさも嗅ぎ取れた。

 いずれにせよ、処女作にして随分と大胆な作風を前面に出していて中々個性的な作家だと思った。

 物語はミニマルにまとめられている。削ぎすまされたセリフ、必要最低限に絞られたシーン、夫々がドラマの中で巧みに絡み合っており一切の無駄がない。

 中でも、やはりアラシュと少女のやり取りは、いずれも秀逸である。
 二人の出会いが仮装パーティーというのも愛らしいし、その後にピアスをプレゼントするシーンも微笑ましく見ることができた。アラシュが少女の耳に穴をあけるのは、明らかに姦通のメタファーだろう。あんなに簡単に安全ピンで穴をあけられるのか?といった疑問も湧くが、このどこか少女漫画チックな演出が心地よい。

 ここまでくると、もはやヴァンパイア映画であることを忘れて、正統派な青春恋愛映画を見ているかのようである。

 ラストの締めくくり方も良い。やや力業という感じがしなくもないが、人間とヴァンパイア。種族の違いという大きな障害を二人はどのように克服するのか?その答えを出さず、観る側に想像させるエンディングが味わいを増す。自分は、この二人の今後の行方にかすかな希望を感じた。
[ 2020/07/24 00:54 ] ジャンルホラー | TB(0) | CM(0)

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