「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」(2014ニュージーランド)
ジャンルホラー・ジャンルコメディ
(あらすじ) ニュージーランドの首都ウェリントンに4人のヴァンパイアがシェアハウスしながひっそりと暮らしていた。379歳のヴィアゴを中心に、彼らは夜になると外へ繰り出して遊び歩く愉快な日々を送っていた。ある日、長老ヴァンパイアのピーターが大学生のニックにうっかり噛みつきヴァンパイアに変えてしまう。こうしてシェアハウスに新たな仲間として加わった新米ヴァンパイアのニックだったが…。
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(レビュー) 現代に生きるヴァンパイアたちの日常をドキュメンタリー風に綴ったコメディ映画。
監督・脚本はニュージーランドのコメディ界で活躍するタイカ・ワイティティとジェマイン・クレメントが共同で務めている。タイカは今やハリウッドで目覚ましい活躍を見せており、先ごろは
「ジョジョ・ラビット」(2019独米)でアカデミー賞にノミネートされた。「ジョジョ・ラビット」も大変ユニークな作品だが、この「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」も変わった作りの作品である。現代に生きるヴァンパイアを記録する、いわゆるモキュメンタリー・スタイルの映画になっている。
登場するのは4人のヴァンパイアたちである。夫々に個性的だが、中でも中心となるのは、監督であるタイカ本人が演じるヴィアゴである。彼を中心にヴァンパイアたちの私生活がドキュメンタリー形式で綴られている。
インタビュー映像や隠しカメラ風の映像でリアリティをもたらす演出が奏功し、実在するはずのないヴァンパイアに実態性を持たした作りはフィクションとノンフィクションの垣根を軽々と飛び越え、作品のテイストを独特なものにしている。
といっても、相手はヴァンパイアであるから当然、観てる方としてはすべてが作り物であることを承知の上で楽しめるわけで、言うなればPVO形式で撮られたホラー映画などと同じで、一風変わったスタイルのジャンル映画として楽しめる。
色々と面白いシーンがあったが、特にヴィアゴが間違って女性の大動脈を噛んでしまうシーンは傑作だった。スプラッタ映画よろしく血の海の中で困り果てる、その姿は笑いを誘う。
あるいは、ヴィアゴたちがインターネットで日の出の動画を見て驚くシーンも笑ってしまった。太陽の光はヴァンパイアの弱点であり、動画の映像ながら反射的に反応してしまう所が可笑しい。
他に、ヴィアゴ達が時代錯誤なファッションに身を包んで堂々とナンパしたり、犬猿の仲である狼男たちとの喧嘩も面白く観ることができた。
また、途中からスチューという童貞男が仲間に加わるのだが、彼の立ち位置も非常に面白かった。ヴィアゴ達は彼の純血を吸いたくて仕方がないのだが、スチューは余りにも心の優しい善人である。彼のことを”獲物”としてではなく、すっかり仲間のように受け入れてしまうのだ。
その一方で、同じく途中から仲間になるニックはトラブルメーカーで、色々と問題を起こしてはヴィアゴたちに迷惑をかける。こちらも物語をかき回すという意味では面白い存在だった。
アクション・シーンも上手く描写されていた。一部でCGも使われているが、基本的にはワイヤーアクションを中心としたトリック撮影である。そもそもがリアリティを追求したモキュメンタリーなので、派手なCGは逆に嘘くさくなってしまうだろう。逆にこのくらいチープだと本物らしく見えて良い。
ラストも良かった。死なないヴァンパイアといつかは死ぬ運命にある人間の恋慕が味わい深くドラマを締めくくっている。