「透明人間」(1933米)
ジャンルホラー・ジャンル古典
(あらすじ) ある猛吹雪の夜、村はずれの宿屋に奇妙な男ジャックがやってくる。サングラスと包帯で顔を隠した彼は部屋に籠って化学実験を始めた。気味が悪くなった主人に退去を命じられると、ジャックは逆上して包帯を外して透明の姿を露わにした。こうして村中をパニックに陥れたジャックは、警察に追われる身となるのだが…。
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(レビュー) H・G・ウェルズの原作「透明人間」を初めて映像化した作品である。
もはや説明不要の古典であり、これまでに何度も映画化されてきたので、知っている人も多いと思う。
一番最初の映画化という意味では記念碑的な作品であり、今もって愛されるモンスターの特質が完全に確立されたという意味でも重要な作品ではないかと思う。
監督はこれまたモンスター映画の古典「フランケンシュタイン」(1931米)をヒットさせたジェームズ・ホエールということで、演出は軽快且つ明快で、実に正攻法に徹しているので安定感がある。
70分という長さも見やすく、脚本も必要十分にして無駄のない作りである。
ただ、透明になる薬を飲むと性格が凶暴になるという設定は、やや安直すぎるという気がしなくもない。そこがドラマチックさを失している部分である。原作通りなのかどうか分からないが、どうせならジャックの葛藤の中でそれを説明すべきだった。
また、これは演出上の不満なのだが、透明人間を捕獲する警察の作戦はやや朴訥としすぎている。全員で取り囲んで見えない透明人間を追い詰めるという作戦は、絵面が間抜けなせいで余り緊張感が感じられなかった。
見所はやはり特撮シーンとなろう。こちらは今見ても十分に面白い。やってることは、今と何も変わらず、他人の帽子を取ったり、箒で叩いたりといった悪戯である。そこがコメディ的な味付けにもなっている。
こうした特撮シーンには撮影のアーサー・エジソンの功労も大きいのではないかと思う。彼は
「西部戦線異状なし」(1930米)や「カサブランカ」(1942米)といった名作も手掛けている名カメラマンである。