「パージ」(2013米)
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション・ジャンルSF
(あらすじ) 1年に1晩だけ犯罪を合法とするパージ法が施行された。これにより犯罪率が下がり、アメリカはかつてない平和な時代を迎えていた。今年もその日がやってくる。セキュリティ・システムのセールスマン、ジェームズは妻メアリー、2人の子どもたちと完璧な防犯システムが備わった家でこの日を迎える。ところが、息子のチャーリーが、家の前で助けを求めていた見知らぬ男を家の中に入れてしまったことで、思わぬ危機に巻き込まれてしまう。
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(レビュー) 1年に一晩だけ犯罪を合法化する法律”パージ法”というアイディアが秀逸である。
日常生活の場が無法地帯と化した時、人はどのように豹変するのか?あるいは、どのようにサバイバルするのか?ある意味で、これは人間の本性を露わにするシミレーションのようでもある。
一応、SFという設定だが、何せ低予算な小品ゆえ、ほとんど現代と変わらぬ世界観となっている。また、家の中を舞台にしたワンシチュエーションの映画なので、随分とこじんまりとした作風である。
ただ、このチープさが奏功し、かなりリアルな恐怖を創り出すことに成功している。
傑作なのはクライマックスである。文字通り阿鼻叫喚の地獄絵図と化していくのだが、そこに前半でチャーリーが助けた黒人浮浪者が再登場する。彼の立ち回りは意外性があって面白かった。
また、本作には強烈な風刺が込められていて、そこも興味深く観ることができた。
この世界では現代より更に貧富の差が拡大していて、富裕層はパージ法を利用して浮浪者を標的にマンハント・ゲームを楽しんでいる。これも人間の醜悪さをよく表していると言えるが、本作はクライマックス・シーンでこれを痛烈に皮肉っているのだ。この映画がただの見世物スリラーで終わっていないのは、この部分である。この痛烈なアイロニーが発せられていることで、作品としての歯ごたえが生まれている。
尚、本作を観て「ジョン・カーペンターの要塞警察」(1976米)やD・フィンチャー監督の
「パニック・ルーム」(2002米)を連想した。屋内を舞台にしたワンシチュエーションの攻防戦という物語が共通している。
監督、脚本はジェームズ・デモナコ。初見の監督さんだが、どうやら脚本家出身の作家らしく、過去には先述した「ジョン・カーペンターの要塞警察」をリメイクした「アサルト13 要塞警察」(2005米仏)の脚本も書いている。そのフィルモグラフィーを知ると、なるほどと思える。
尚、今作は全米でスマッシュヒットを飛ばしシリーズ化された。現在までに映画が4本とテレビシリーズ1本が製作されている。