「パーティで女の子に話しかけるには」(2017米)
ジャンルSF・ジャンルロマンス
(あらすじ) 1977年のロンドン。パンク好きな高校生エンは、ある日、ライブの帰りに不思議なパーティに迷い込み、そこでザンという少女と出会う。規則だらけの生活にうんざりしていた彼女はエンが語るパンクに興味を持ち、パーティを抜け出して一緒に街へ繰り出すのだが…。
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(レビュー) 平凡な高校生が宇宙人の少女と恋に落ちるSFロマンス作品。
ボーイ・ミーツ・ガールの定番物語であるが、相手の少女が宇宙人という設定で、彼らの儀式や思考が一風変わっているため非常にユニークな作品となっている。
例えば、宇宙人のパーティーは倦怠感漂う雰囲気で、どこか前衛芸術のような摩訶不思議さがある。彼らのセックスも独特で、性交中にオーガズムに達するとマジシャンよろしく”ある物”を体から出してしまう。
個人的にはパンクと宇宙人という組み合わせから、伝説のカルト作「リキッド・スカイ」(1982米)を連想した。
また、緑のエメラルドという小物が登場するあたりには、宇宙人とロック・アーティストの禁断のホモセクシャルな恋を描いた
「ベルベット・ゴールドマイン」(1998英)も連想させられた。
ビジュアル的には非常にユニークな作品であるが、一方のドラマはというと、こちらは結構古風なものである。ロミオとジュリエット的な…と言ってしまったら身も蓋もないが、要するに人間と宇宙人の恋愛という、種族の違う男女が大恋愛を演じるという普遍的な内容である。
ただ、ラストにかけて、この映画はかなり壮大なテーマにまで言及していくようになり、そこはいい意味で裏切られた。
エンは過去に父親から捨てられたというトラウマを抱えている。ザンたちエイリアンは親子間で”ある奇抜な慣習”が行われている。エンとザン、夫々の親に対する反発、わだかまりから、血縁、生命の連鎖といった壮大なテーマが導き出されていく。
一見するとチャーミングなロマンス映画に見えるのだが、ここまで風呂敷を広げるとは予想できなかった。しかも、その風呂敷がエピローグで見事に収束されるのでカタルシスも感じられる。
監督・共同脚本はジョン・キャメロン・ミッチェル。「ヘドウィグ・アンド・アグリー・インチ」(2001米)、
「ラビット・ホール」(2010米)と、佳作ながら独特の作品を作り続けている作家である。今作もそうだが、一風変わったユニークな作品が多い。
特に、今回は昔のB級SF映画のようなノリが散見され、そこが面白く観れた。
キャストではザンを演じたエル・ファニングの魅力。これに尽きると思う。パンク・ファッションで熱唱する姿が愛らしく、他にも様々な顔を見せている。ある種アイドル映画として、ファンなら垂涎ものだろう。
一方のエン役の俳優は、申し訳ないが今一つだった。確かに平凡な高校生という設定なので、これはこれで合っているのかもしれないが、ザンが心を寄せるだけの魅力が余り感じられなかった。
他に、音楽プロデューサー役でN・キッドマンが登場してくる。意外な役どころで驚かされた。