「アップグレード」(2018米)
ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) 愛する妻と幸せな日々を送っていたグレイは、ある日突然、謎の組織に襲われ、妻を殺され自身も全身麻痺の重傷を負ってしまう。失意に暮れるグレイのもとに、巨大企業の天才発明家がやって来る。開発中の最新AIチップ“ステム”を埋め込まれたグレイは再び体の自由を取り戻し、憎き犯人の行方を捜し始める。
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(レビュー) 最新AIチップを埋め込まれた男が超人的なパワーで悪人たちに復讐を果たしていくSFアクション作品。
よく人間は脳の10%しか使ってないと言われるが、もし最新AIチップで今以上の能力を引き出せたら…という夢のような物語である。
実際にそんなに上手くいくのかという疑問は置いておき、映画としてこのアイディアはすこぶる面白い。
グレイは脳内のAIチップ”ステム”と会話しながら自分と妻を襲った謎の組織に戦いを挑んでいく。情を持った人間と合理的な機械では思考が違うので当然対立もするのだが、二人(?)は同じ肉体に宿る運命共同体として一緒に戦っていく。ちょうどバディ・ムービーのような感覚で楽しめる。
また、超人的なパワーを手にするというのもロマンがあって面白い。普通の人間がもしスーパーヒーローになったら…というのを、そのままやっているわけで、これはほとんど漫画的なノリである。
一方、ストーリーは実にシンプルである。黒幕の正体も容易に想像がつくので、もう少し捻りが欲しい。正直、物足りなかった。
ただ、ラストはいい意味で予想を裏切る終わり方になっている。普通であればハッピーエンドで終わらせるところを、この映画はAIの恐怖というメッセージを提示してドライに締めくくっている。
監督、脚本はリー・ワネル。「ソウ」シリーズの脚本家から出発し、「インシディアス 序章」(2015米)で監督デビューをした作家である。「インシディアス 序章」は未見だが、今作を観る限り演出は軽快で中々手練れていると思った。
また、「ソウ」シリーズからすでにその才能は買われていたが、新鮮なアイディアを物語に上手く組み込むことに長けた作家のように思う。AIチップという未来のガジェットを人間の肉体に宿らせることで、一人の男の破滅と再生を描いた所に本作の妙味がある。
確かにバレバレなミスリードなど工夫が足りない部分もあるが、それを補って余りある秀逸なアイディアは新鮮である。