「夜の第三部分」(1971ポーランド)
ジャンルサスペンス・ジャンルファンタジー・ジャンル戦争
(あらすじ) 第二次世界大戦下のポーランド。ミハウは家を留守にしている間に家族をナチスに皆殺しにされてしまう。その後、抵抗運動に参加した彼はナチスに追われることになる。その時、彼の身代わりに別の男が撃たれて連行されていった。その男の妻はマルタといい、驚くほど自分の妻に似ていた。ミハウはマルタと彼女のお腹の子供を養うためにナチスの人体実験に手を貸すようになる。
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(レビュー) ナチス占領下のポーランドで家族を失った男が悪夢のような体験をしていく不条理劇。
監督、脚本はこれが長編デビューとなるアンジェイ・ズラウスキー。
シュールで幻想的な映像演出、ストーリーの不可解さ、人を食ったようなオチ等。氏の特徴が前面に出た作品であり、観終わった後に頭の中で「?」が浮かぶこと必至な怪作である。
個人的な解釈では、ミハウはナチスに撃たれたときにすでに死んでいたのではないかと思う。以降の物語は彼が見た夢の中の出来事で、ラストで彼の魂は元の肉体に戻ってようやくあの世へ旅立つことができた…と解釈した。
それにしても、ミハウは妻と瓜二つのマルタと赤ん坊の世話をするために、憎きナチスの実験体にまで身を落とすのだから、その胸中を察すると実に切なくさせる。その実験とはチフスの研究のための人体実験である。あまりにも非人道的な、そして戦争の狂気が生み出した蛮行である。命を救えなかった妻子に対する贖罪か。あるいは彼らに対する未練か。いずれにせよ、ミハウは実に悲しい男である。
先述したように、本作は色々と想像しながら観て行かないと、最終的にワケわからないという映画になってしまうので、注意が必要である。ただ流れてくる映像やセリフだけを漫然と眺めても、一体それが何を表しているのか分からない…というのが続いてしまう。
自分も大体の話の流れは独自に解釈したつもりだが、それでも細かな点でまだよく分からない謎が残った。
例えば、ミハウの前に現れた預言書の男は一体何者だったのか?盲目の男は抵抗運動の組織のリーダか何かだったのか?こうしたところはよく分からなかった。
決して情報量が多い映画ではない。しかし、全てを親切に説明してくれる映画ではないので、一度見ただけでは完全に把握するのは難しい作品である。