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悪魔


「悪魔」(1972ポーランド)星3
ジャンルファンタジー・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 18世紀末のポーランド。国王暗殺未遂の罪で精神病院に収監されていたヤクプは、悪魔の手助けによって修道女と一緒に脱走する。その足で彼は故郷へと向かったが、そこには変わり果てた実家の姿があった…。
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(レビュー)
 動乱のポーランドで悪魔に取りつかれた男が次々と禁忌に反した凶行にのめり込んでいく不条理劇。

 ポーランドの鬼才A・ズラウスキー監督の長編第2作。演者の狂演とゲテモノ的ポルノ趣味は、後の「ポゼッション」(1981仏西独)に通じるようなテイストである。「ポゼッション」も相当強烈な作品だったが、今作における殺人、レイプ、近親相姦、男色等のバイオレンス&グロテスクさはそれ以上かもしれない。かなり刺激的な映画である。

 一方、物語自体はいわゆるコスチュームプレイ物として普通に展開されるので、映像ほどのインパクトはない。若干、構成に難ありで、例えばヤクプを巡る周囲の人間模様が雑多だったり、途中で登場する俳優一座も特段ドラマに必要性が感じられなかった。

 ヤクプが悪魔に指図されるまま行動するというのも、葛藤不足で感情移入しずらいものがある。もちろん、物語への感情移入をさせるようなタイプの作品でないことは分かるのだが、何せヤクプが実家と元恋人の間を行ったり来たりしてるだけなのでドラマの変化に乏しいのが致命的である。

 ただ、先述した見世物的面白さには事足りない作品なので、最後まで一気に見れてしまったのも事実で、このあたりはズラウスキー監督の演出手腕のおかげだろう。同様のことは「ポゼッション」鑑賞時にも思ったのだが、とにかく画面から漂う異臭、毒々しく重苦しい雰囲気に魅了される。こういう空気感の映画を撮れる人は中々いないと思う。

 例によってキャストの過剰なまでのパフォーマンスも画面に異様な熱気をもたらしていた。

 また、カメラワークもかなり野心的で、一部で魚眼レンズによるPOV形式の表現がある。これがヤクプから見た悪夢的世界観を見事に再現している。悪魔に魅了された人間が、この世界をどのように見ているのか?ある種地獄めぐりのような映画なので、怖いもの見たさで見る分には十分に満足のいく”映像”作品かもしれない。
[ 2020/09/04 00:53 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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