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コスモス

「コスモス」(2015仏ポルトガル)hoshi2.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 法学部の試験に落ちたヴィトルドは、勉強のためにポルトガルの港町へやってくる。同じ年の青年と意気投合した彼は、家族経営の民宿に滞在することにした。そこには躁状態の女主人、浮世離れした夫、唇のめくれた女中、美しい長女が住んでいた。ヴィトルドは長女に恋をするのだが、彼女にはすでに婚約者がいた。
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(レビュー)
 一人の青年が奇妙な民宿に滞在しながら、そこに住む少女に惹かれていく青春ロマンス。同名原作の映画化である。

 監督、脚本がアンジェイ・ズラウスキーということなので例によって一筋縄ではいかない作品となっている。
 普通に描けば、ちょっとシュールなナンセンスコメディになるだろうが、いたるところに意味深で詩的なセリフが散りばめられている。物語自体は割と明快なのだが、こうしたズラウスキーらしいギミックが各所に施されることによって作品全体の印象は難解なものとなっている。

 物語はヴィトルドの視点で綴られる。彼は民宿の娘に一目ぼれするが、彼女は聡明でハンサムな男性と婚約中である。それでも彼は諦めきれず、なんとか彼女に近づきたいと願うのだが、袖に振られるばかりでまともに相手にされない。
 逆に、彼は唇のめくれた女中に迫られてしまう。しかし、ヴィトルドは彼女まったく関心がなく、こうして奇妙な三角関係の同棲生活が始まる。

 美しい娘と唇のめくれた女中の間で揺れ動くヴィトルドの葛藤を見ると、これは美醜の価値観がテーマなのではないか…という気がした。
 人は外見の美しさに魅せられ、時として本当の価値観を見失ってしまうものである。外見にとらわれず真価を見出すことは大変難しい。美しい娘と醜い女中を対比的に登場させたのには、そんな意味があるのではないか、という気がした。

 相変わらず演者の大仰な熱演が随所で炸裂しているが、これもズラウスキーの映画を観慣れている人からすればお馴染みの光景であろう。それに圧倒されて不思議と最後まで見続けられてしまう。

 また、海を捉えた映像が実に美しく、このあたりには詩的な風情も漂う。

 紐につるされた雀や電線につるされた鶏の死骸など「死」のメタファーが随所に登場してくるが、これも作品全体に異様な雰囲気を漂わせている。ヴィトルドはこれらの光景を目撃、もしくは想像することで、「死」のイメージに取りつかれ徐々に常軌を逸した行動をとるようになっていく。このあたりは、さしずめホラー映画的でもある。

 本作はズラウスキーの遺作となる。彼は終始一貫して自分の世界観を貫き通した稀有な作家だったように思う。エンタメ性よりもアート性を追求した独自のスタイルは今もって古びない魅力を見る側に与え続けている。ポーランドからフランスへ渡り、一時は映画製作ができない時期があったことを考えると、真の意味での”孤高の作家”だったという気がする。こういう映画作家はもう中々現れてこないだろう。
[ 2020/09/07 00:40 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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