「2分の1の魔法」(2020米)
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー・ジャンルコメディ・ジャンルアクション
(あらすじ) かつて魔法が栄えていた世界。今ではすっかり魔法が廃れ、誰もが文明の力を享受していた。16歳になった少年イアンは、引っ込み思案で何事にも自信を持てずにいた。そんな彼に、母は亡き父が残した魔法の杖を与える。イアンは父に一目会いたいと願いそれで彼を復活させようとする。ところが、魔法は半分しか成功せず、父の下半身しか蘇らなかった。陽気な魔法オタクの兄バーリーとともに、イアンは復活の魔法を完成させるべく大冒険へと旅立つ。
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(レビュー) 引っ込み思案な弟と陽気な兄の冒険をアクションとユーモアを交えて描いた感動のファンタジー・アニメ。
父に一目会いたいと願うイアンの思いから始まった兄バーリーとの旅は、最終的に意外な顛末を迎え、このクライマックスには良い意味で予想を裏切られた。ストーリー構成が見事である。
また、二人が道中で出会う事件やアクションも楽しく描かれ、個性あふれるサブキャラもそれぞれにいい味を出していて、全編通して面白く観ることができた。特に、マンティコア酒場の女主人が印象的である。
一方で、本作は後半に行くにつれて、ペーソスの味わいも増していく。
中でも印象に残ったのは、イアンとバーリーの関係に亀裂が入るシーンである。中盤で二人が走らせるバンがスピード違反で捕まってしまうのだが、ここでイアンのハーリーに対する”本音”がチラッと出てしまう。それを聞いたハーリーのシリアスな顔。そんな兄をよそよそしく気遣うイアン。車中の二人の微妙な心理が中々に魅せる。
また、ハーリーが生前の父との思い出を吐露する終盤のシーンにもペーソスは感じられた。ハーリーの悔恨。そして、亡き父に彼もまた会いたがっている、ということが切々と綴られている。
監督は「モンスターズ・インク」(2001米)の前日弾を描いた「モンスターズ・ユニバーシティ」(2013米)で監督デビューを果たしたダン・スキャロン。
製作は、映像クオリティの高さ、ストーリーテリングの上手さについては定評があるピクサースタジオ。今回も十分に満足のいく出来栄えとなっている。
ただ、観終わった後に少しだけ物足りなく感じた部分もある。それは、魔法が消えかけている世界という特殊な世界観をドラマの盛り上がりどころで上手く使いきれなかった点である。
結局、本作は家族愛という所にオチを持ってきてしまっているので、割とこじんまりとした印象になってしまった。この冒険を通してイアンの魔法は覚醒するわけだが、それは彼個人の成長ドラマであって、魔法が消えかけた世界を変えるほどの”インパクト”はない。できれば彼が起こす奇跡の魔法が世間に何らかの衝撃を与える…という所まで言及出来たら、この作品はスケール感と力強さを増すことができただろう。魅力的な世界観をドラマに十分に結び付けられなかった点は少し残念である。