「メアリー&マックス」(2008豪)
ジャンルアニメ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) オーストラリアのメルボルンに住む8歳の少女メアリー。友だちのいない彼女は、アメリカの見知らぬ誰かに手紙を書こうと思い立ち、分厚い電話帳から変わった名前のマックス・ホロウィッツ宛てに手紙を出す。マックスはニューヨークに暮らす肥満体の中年男で、他人とのコミュニケーションが苦手で孤独な日々を送っていた。二人は文通を始めていくのだが…。
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(レビュー) 見知らぬ男女が約20年にわたって文通を繰り返しながら、徐々に固い絆で結ばれていく過程を、クレイ・アニメで表現した作品。
本作は監督自身の実体験を基にした作品ということである。ウソのようなホントの話で、こういう体験ができるというのは人生において中々貴重ではなかろうか。
マックスとメアリーは年齢や性別がまったく異なるが、孤独な者同士、分かり合える部分も多く、この文通を通して次第に友情で結ばれていく。但し、マックスはアスペルガー障害者である。この辺りがちょっと気を使わなければならない点である。メアリーはまだ子供ということで、そのあたりを全然察しておらず、やがてこの文通は悲劇的な展開を迎えることとなる。メアリーの”あること”がきっかけで、それまでの友情が壊れてしまうのだ。
もちろんメアリーに悪気はない。しかし、マックスの心を深く傷つけてしまったことは事実で、このあたりが人と人とのコミュニケーションの難しさである。
こうして二人の文通は終わってしまうのだが、映画はここから二人の関係修復のドラマが描かれていく。普通の映画であれば感動的に描くのであろうが、本作はそこも安易なハッピーエンドに堕していない。一度壊れてしまったものを再び元通りにすることがいかに難しいか。そのことが痛感される。
しかして、ラストは少し切ない形でエンディングを迎えるのだが、ここには監督の強いこだわりが感じられた。それは、これが実体験に基づく物語だからなのかもしれない。
映像はメルボルンのシーンはカラフルに、ニューヨークのシーンはモノトーンといった具合に完全に差別化されている。ただ、陰鬱になりそうなニューヨークのシーンも、要所に赤色や黄色といった明るい色を配することで、ダークなトーンを上手く中和している。したがって、観てて余り不快な感じを受けなかった。この辺りはこの監督のセンスだろう。
人形の造形はデフォルメを利かせユーモラスだが、どこかブラックさも感じさせる。ティム・バートンの世界観に通じるようなグロテスクさも伺え、一種独特である。他では余り見られない造形で面白いと思った。