「TATSUMI マンガに革命を起こした男」(2010シンガポール)
ジャンルアニメ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 新聞社に4コマ漫画を投稿していた辰巳ヨシヒロは、高校卒業後、プロの漫画家を目指すべく上京する。そして、自らが描く大人向けの漫画を“劇画”と命名して精力的な執筆活動を行っていく。彼の作品は劇画ブームの火付け役となっていく。
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(レビュー) 漫画界に一大旋風を巻き起こした”劇画”の名付け親、辰巳ヨシヒロの短編5本をオムニバス形式で構成したアニメーション作品。
辰巳ヨシヒロのことを全く知らずに観たのだが、海外では結構有名らしく、この映画もシンガポールの作家が監督をしている。
日本にいると当たり前のように劇画に触れているが、それがこういう形で生まれたのか…ということが知れて興味深く観れた。
映画は全部で5本の短編アニメで構成されている。原作はいずれも辰巳自身が描いた短編で、マンガの絵をそのまま映像化したような作風となっている。フラッシュアニメのような感じで、ディズニーや現代の日本のアニメを見ていると拙さは感じる。ただ、逆に言うと原作のテイストは見事に再現されているような気がした。モノクロに色を付けてカラー化したり、色々と工夫が凝らされている。
そこで描かれるのは、戦後直後の日本の復興を背景にしたドラマである。広島の原爆投下や闇市、貧困に喘ぐ市井の人々のドラマなどがオムニバス形式で綴られている。
そして、一連の短編から、辰巳自身の半生が読み解けるのも面白い。
彼は幼少時代は新聞の4コマ漫画に投稿を続け、マンガの神様である手塚治虫に促され長編マンガを描くようになる。それが劇画ジャンルの走りになるわけだが、やがて劇画ブームが落ち着いてくると徐々に彼の働き場所は失われていく。こうした彼の漫画家としての人生が哀愁タップリに再現されている。
ある種、彼の半生を描いたドキュメンタリーのようになっているのが興味深い。今までこういう作りの映画はあるようでなかったので新鮮に観れた。
声は辰巳自身と別所哲也がナレーションを含め6役を担当している。