「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(2020日)
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー・ジャンルロマンス
(あらすじ) 感情を持たない“武器”として育てられた元兵士の少女ヴァイオレット・エヴァーガーデン。戦後、彼女は“自動手記人形”と呼ばれる手紙の代筆業に従事しながら、戦場で別れた恩人ギルベルト少佐を思い忍ぶ日々を送っていた。そんなある日、彼女はユリスという名の少年から依頼の電話を受ける。
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(レビュー) 2018年にテレビアニメシリーズ化された同名作の劇場版。テレビ版のその後を描く続編である。
自分はテレビ版を一通り見ての鑑賞である。
一応おおまかな設定やあらすじは、過去のフラッシュバックなどで簡単に説明されているので一見さんにも理解できる内容と思う。しかし、実際に見ているのと単に知っているとでは、本作の鑑賞感は大分違ってくるだろう。第一にヴァイオレットと少佐の絆がいかに運命的な物で深いか。それはテレビ版を通して見てみないと分からないと思う。
今作はテレビ版に描かれた1エピソードを元にドラマが構成されているので、その点でも事前の情報はチェックするにこしたことはない。
そのテレビ版の”あるエピソード”との絡め方も実によくできている。
本伝であるテレビ版から数十年たった未来から物語は始まる。このエピソードはシリーズ屈指の名エピソードと言われており、それを思い起こすだけでも胸が締め付けられそうになる。
そこから物語は過去にさかのぼりヴァイオレットと少佐の恋慕が展開される。
まずは、この流麗な展開と時世を交錯させた構成が実に素晴らしい。
また、人々のコミュニケーションが電話に取って代わり、ヴァイオレットたち自動手記人形の代筆業が風化しているという時代背景には郷愁もおぼえる。かつての愛を取り戻していくヴァイオレットと少佐の姿には、ある種おとぎ話のような伝承性さえ感じ、この時代設定の上手さにも感心させられた。
また、本作には新しいエピソードも追加されている。それはユリスという少年のエピソードである。こちらもメインのドラマであるヴァイオレットと少佐の恋慕に相関されており、上手い作りに思えた。思いを伝えることの大切さ…というと少々臭いが、言うなれば普遍的な愛の物語として至極王道にまとめられているのだ。
映像も魅力的である。本作の舞台は架空の世界であるが、そんなことを忘れさせてくれるような緻密な映像に親近感がわく。魔法や特殊能力といった飛躍したギミックがない分、現実味のあるドラマとなっている。
難を言えば、一部で不要と思える描写があったことだろうか。テレビで描かれたキャラやエピソードが幾つか後日談的に登場してくるが、これは余り意味がないように思えた。おそらく初見の人にとってみれば、思い入れがない分、ピンと来ないのではなかろうか。
もう一つ、会話するときのキャラの距離感がいくつかのシーンで気になった。明らかにその話し声では相手に聞こえないだろう、という遠い距離で会話するシーンが散見される。ソーシャル・ディスタンスの注意喚起ではないだろうが不自然に映った。