「おっぱいとお月さま」(1994仏スペイン)
ジャンル青春ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 9歳の少年テテは弟が生まれて大好きな母親のおっぱいを奪われてしまい、いじけていた。ある日、海辺の見世物小屋でショーをするためにやってきた踊り子エストレリータに一目惚れする。しかし、彼女にはバイク乗りの夫がいた。しかも、町の青年ミゲルも彼女に恋してしまい…。
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(レビュー) おっぱいに憧れる少年の無垢なる愛をシュールなテイストを交えて綴ったロマンチック・コメディ。
たわいものない思春期少年のひと夏のドラマだが、忘れがたい愛すべき小品である。ただ、エロティックなシーンがあるので、どちらかと言うと大人が観て郷愁に浸るタイプの作品かもしれない。
面白いと思ったのは、所々にフェリーニ映画のオマージュが感じられることである。
例えば、海辺の見世物小屋というシチュエーションは、フェリーニ的祝祭感が感じられるし、放漫な女体への憧憬というのもやはりフェリーニ的アイコンと言って良いだろう。「フェリーニのアマルコルド」(1974伊仏)を連想した。
冒頭のダイナミックなカーニバル・シーンやテテが夢想する幻想シーン等、映像的な見どころも尽きない。
例えば、おっぱいから噴き出すミルクを口で受け止めるシーン、テテの弟が豚に変身するシーン、宇宙服を着て月面着陸するシーン等、ファンタジックでシュールな映像センスが要所で奇妙な可笑しさを醸している。
その一方、下ネタも多々ある。
例えば、エストレリータが足舐めフェチだったり、彼女の夫がおなら芸のプロだったりするあたりには、この監督の性癖と笑いの感性が見て取れる。好き嫌いが分かれるかもしれない。
物語は実にシンプルに構成されている。乳離れできないテテが淡い恋心を通して一皮むけていくという、実にオーソドックスな成長ドラマとなっている。個性的な映像に比べると、驚くほどクラシカルで拍子抜けするほどなのだが、しかしこのシンプルさは決して退屈することなく観ているこちら側に素直に響いてくる。
いつの世も男はおっぱいが好きで、冒険と夢想を好む生き物なのだ。それが実によく分かる映画である。
キャストではエストレリータを演じたマチルダ・メイが美しい裸体を披露し印象に残った。彼女はT・フーパー監督のSFホラー「スペース・バンパイア」(1985米)でも全裸の美人エイリアンを演じていた。本作でも自慢のバストを披露している。