「さようならCP」(1974日)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) CP(脳性小児麻痺)者たちの実生活をとらえたドキュメンタリー映画。
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(レビュー) CP(脳性小児麻痺)者の赤裸々な姿を捉えた衝撃のドキュメンタリー。
「ゆきゆきて神軍」(1987日)や
「ニッポン国VS泉南石綿村」(2018日)等、センセーショナルな題材と社会問題を真っ向から描いてきたドキュメンタリー作家・原一男の監督第1作である。
障碍者たちの姿を真正面から捉えた内容は、観る人によっては嫌悪感を抱く人もいるかもしれないが、これもまた氏の作品の特徴である。きれいごとなど一切なしのガチンコ撮影には頭が垂れる思いだ。
印象的だったのは、町のど真ん中で寄付を募るシーンだった。募金をした人に何故募金をしたのか?と尋ねると、可哀そうだからという答えが返ってくる。これはこれで人としての良心であり、正直な答えだろう。
ただ、その一方で障害者も一人の人間である。普通の人と同じように扱ってほしい…という気持ちもきっとあるはずである。単純に障碍者=可哀そうという色眼鏡で見ることが果たして正しいのかどうか…。そこは考えさせられてしまう。
ラスト直前、全裸で道路のど真ん中に鎮座する障碍者の姿は強烈な印象を残す。すべてを曝け出したその姿に、彼の生き様みたいなものが感じられた。自分の本当の姿を見て欲しいという主張に見えた。
本作には”青い芝”という障碍者の団体が登場してくる。彼らの中にも、自分は独立した一人の人間であり特別扱いしてほしくないと思ってる人が多い。車椅子を使わず地べたを這いつくばって移動する者、風俗店で性的欲求を満たす者。その言動は障碍者=可哀そうという一般的な概念を覆す。
この映画は、障碍者の救済と自立、その微妙な狭間を鋭く突いたドキュメンタリーのように思う。
同情するだけが彼らの救いになるわけではない。一番は当事者の生の言葉に耳を傾けることが大切なのではないか?ということを我々に教えてくれるからだ。
観た人はきっと障碍者に対する既成概念が一変することは間違いないだろう。多くの人に観てもらいたい意義ある作品である。
ただ、インタビューの中には、何を言っているのか聞き取れないものが多かったので、できれば字幕を付けて欲しかったかもしれない。もっとも、そこも原一男監督は敢えてつけないことで、彼らの言葉を直に受け取って欲しいと願ったのかもしれないが…。