「海は燃えている ~イタリア最南端の小さな島~」(2016伊仏)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) イタリアの最南端のランペドゥーサ島にやって来る難民、移民を捉えたドキュメンタリー。
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(レビュー) 自分はこの映画を観るまでランペドゥーサ島のことをまったく知らなかった。フランスやイギリス、ドイツなど、ヨーロッパにはアフリカや中東からの移民がたくさん住んでいることは知っていたが、このような小さな島にも移民が入ってきているとは知らなかった。
本作は、実際にどのように移民がやってきて、どのように当局が対処しているのか、ということが現場目線で描かれている。実に詳細に、そして生々しく撮影されていて、これだけでも貴重なフィルムとなっている。一見の価値があるドキュメンタリーと言って良いだろう。
中でも後半、移民を乗せた船がたどり着くシーンは必見である。
アフリカからやって来たその船は、数日間かけてランペドゥーサ島にたどり着く。しかし、食料不足や衛生面の問題で、何人かが遺体で発見される。病院に担ぎ込まれた子供たちもいた。まさに地獄絵図のような光景が延々と映し出され、観てて本当に辛かった。
移民問題について描いた劇映画はこれまでに何本か観てきたが、本作を観るとそれらが吹き飛んでしまうほど衝撃的である。リアルなドキュメンタリーならではの説得力であろう。
そして、本作は移民たちの姿を捉える一方で、島に住む一人の無邪気な少年の姿も描いている。彼は父親から、この島に生まれたからには将来は船乗りだと厳しく言いつけられるが、まだ友達と遊んでいる方が楽しい年ごろである。手製のパチンコ弾を作って遊んだり、海岸を走り回ったりする姿が実に微笑ましく見れた。
おそらく過酷な運命を背負わされた移民と、平和な暮らしを送る少年を対比させることで、問題の深刻さを浮き彫りにするという意図からこうした構成にしたのだろう。
但し、個人的にこの少年のエピソードは余り面白いとは思えなかった。余りにも作り手側の創意が透けて見えてしまうからである。ラストで少年がパチンコ弾で戦争ごっこするのも、どうも取ってつけたような印象にしか思えなかった。
被写体の焦点を移民のみに絞ったほうが、テーマも鮮明になり力強い作品になったのではないだろうか。