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ホモ・サピエンスの涙

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「ホモ・サピエンスの涙」(2019スウェーデン独ノルウェー)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル。この世に絶望して信じるものを失った牧師。これから愛に出会う青年。陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー等。様々な風景を綴ったオムニバス風ドラマ。

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(レビュー)
 監督、脚本は「散歩する惑星」(2000スウェーデン仏)、「さよなら、人類」(2014スウェーデンノルウェー独仏)のロイ・アンダーソン。独特のオフビートなユーモアで人生の悲喜劇を描く鬼才である。

 今回は33シーンを1カットで描くというスタイルで、日常生活の一コマから歴史上の重要な場面、聖書の一片を軽やかに綴っている。「さよなら、人類」同様、基本的にはショートコントの寄せ集めだが、ほぼすべてのシーンにナレーションが入っているのが特徴的だ。ナレーションの主は誰なのかは最後まで明かされないが、人間界を天から眺める神、あるいは天使の語りなのではないか…と想像した。
 そういう意味では、W・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」(1987西独仏)を想起させたりもする。

 「さよなら、人類」を観て今一つピンとこなかった自分だが、今回はこのナレーションがあることでとても理解しやすいものとなった。今から思えば「さよなら、人類」も神の視点で綴られた群像劇という解釈ができるのだが、当時は全体を通して描きたかったテーマがよく分からなかった。
 しかし、今回は神、あるいは天使のナレーションが挿入されることで、すべてのエピソードは人間の愚かさ、喜び、人生の軌跡といったテーマに集約できるのではないか…ということに気付かされた。

 一見すると、ただのコント集のように見える本作だが、観終わった後には、ある種壮大な人生叙事詩を見せられたような、そんな趣が感じられた。

 そんな中、最も印象に残ったのは、神の存在を信じられなくなった牧師のエピソードである。基本的に本作は1シーン1カットの独立した単発エピソードで構成されているが、彼に関しては複数のシーンに渡って描かれる連作となっている。神の視点で描かれる本作にあって、神の存在に不信感を募らせる彼の苦悩はどこかメタ的で面白い。

 もう一つ印象に残ったエピソードは、悩みを抱えた歯科医がバーでヤケ酒を飲むシーンである。窓の外には雪がしんしんと降り積もり、それを店内の人々が眺めているというカットである。暫くすると客の一人がその美しさに感激して歓喜する。しかし、歯科医をはじめ誰も彼の感動に共感しない。
 我々は往々にして日常生活に追われ、普段は感動とは無縁の生活を送っている。しかし、そんな人生の中にも美しい場面はきっとあるはずで、要はこの男のようにそれに気付けるかどうかが問題なのではないだろうか。ささやかな軌跡を喜びと感じることができれば、きっと人生は楽しいものになるのではないか。そんなメッセージが感じられた。

 映像は全編固定カメラによる奥行きのある構図が貫かれている。いずれも絵画的な美しさと均整さを保っているのが特徴的である。再見してみたくなるような、そんな魅力にあふれる映像ばかりだった。

 特に、廃墟の街の上空を飛ぶカップルの姿、キリストのゴルゴダの丘のパロディ、シベリアの果てしない大地を歩く捕虜兵たちの姿、土砂降りの中で幼い娘の靴紐を結ぶ父親の姿などは印象に残った。
 尚、「散歩する惑星」の頃から一貫してアナログ主義なロイ・アンダーソンであるが、今回も全ての映像がアナログで表現されている。
[ 2020/12/06 00:49 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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